第60話 俺のことをばらそうとする奴を殺してくれる優しい女

リムルはバイム王から追放された後、城を出る。

その時、こそこそとバイム王の部屋の周りで情報収集しているギリトを発見する。


もちろんギリトは俺の命令で、密偵の仕事をしていただけだ。


それをリムルに見つけられ通報された。


ギリトは今、バイム王を裏切り密偵をしていたという罪で、ギロチンにかけられている。


リムルは、このことがバイム王に評価され少しばかりの金と、ナヴル王への紹介状を書いてもらう。


そして、リムルはナヴル王に召し抱えられるという訳だ。


で、ギリトだが、今まさに俺のことを自分の命欲しさに白状しようとしていた。


「俺を雇ったのは……カイ……」


俺の名前を言い切ろうとした瞬間、ギリトの顔が炎に包まれた。


「おわあああああ!」


絶叫するギリト。


「なにものだ!であえ!であえ!」


アロセリアが叫ぶ。


「きゃあああ!ギリトさんが燃えましたぁ!」


アオイも叫ぶ。


「まぁ!一体何かしら!びっくりだわ!」


エミリアの艶っぽく高い声。


俺は部屋を見渡した。


フィーナがいない。


俺は窓の外を見た。


向かいの高い尖塔に黒い人影が見える。


その人影は長い髪を風にたなびかせていた。


フィーナだ。


あそこから炎の魔法をギリトに放ったんだ。


よくやったフィーナ。


ゲーム通り、ギリトをヤッテくれた。


口封じが出来た。



その日の夜。


俺は城の屋上で星を眺めていた。


「カイト……」


俺を呼ぶ声。


低い女の声。


「フィーナ」


俺は振り返り、黒髪の美少女を見る。


月明りに黒髪が光り、頭頂部に天使の輪を作ってる。


「昼間はありがとう」


俺は礼を言う。


「カイトが……困ってたから……」


フィーナがちょっと顔を赤らめて言う。


「ありがとう」


フィーナとの親交度は90。


もう勝確だ。


あと少しで、いつでも俺たちは愛し合える。


だがしかし、フィーナがギリトを攻撃してくれたのは意外だった。


暗黒ルートに進んだリムルが置き土産を残していくことは知っていた。


その置き土産、つまりギリトの告白を防いでくれるのは、パーティメンバーの誰かだとも知っていた。


様々な動画やプレイで俺は検証したが、その時、一番高い親交度を持ったメンバーがギリトを殺してくれる。


俺が検証た時は、戦士ボルタがギリトを投げ斧で殺してくれた。


親交度が高いなら、アオイがギリトを殺してくれるはずだった。


だが、実際にはフィーナがギリトを殺してくれた。


確かに、アオイは攻撃手段を持たない。


だからフィーナがやってくれたのか?


どちらにしても、フィーナが俺のことを好きで、俺のためにやってくれたことは、ゲーム展開通りだとしても嬉しい。

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