第59話 俺たちが雇った密偵が、俺たちを裏切る可能性100%

ざわ、ざわ……


「なんだか広場が騒がしいわねぇ」


バイム王の城の食堂で朝食を摂っていた俺達。


城の中庭で人のざわつく声が聞こえて来たのを、耳がいいエミリアが気にしている。


「なんでしょうか?」


アオイが、口に運ぼうと指定がパンを皿に置き、窓の方に向かう。


「あ!!」


ビクリと肩を震わせるアオイ。


酷いものを見た様だ。


「どうした?」


「あ、あ……ギリトさんがっ……」


「あの密偵に雇ったという男か……」


あまり関心が無さそううなフィーナ。

黙々とパンにバターを塗り、口に運んでいる。


「ギロチンにかけられてますぅ!」


今にも泣き出しそうなアオイ。


「落ち着け」


「でも、私達の仲間ですよ!カイトさん」


「様子を見よう」


俺はアオイの肩を抱きながら、窓を開けた。


「この男は、バイム王を裏切り、密偵活動を行っていた!よって、死刑にする!」


中庭で大声を上げる騎士。


その名はアロセリア。


彼はバイム王直属の騎士団でその団長を務めている。


バイム王に最も忠実な彼は、王を裏切り密偵活動を働いたギリトを許せないのだ。


そして、規定により死刑を言い渡されていた。


中庭に設置されたギロチンに、首がセットされたギリトは醜く泣きじゃくっていた。


ギロチンの周りには城の召使や騎士、兵士、そして、一般市民も集められていた。

いわゆる見せしめのために今日だけは城の中庭を一般開放したのだ。


「ギリトよ!誰に頼まれたか白状すれば助けてやらんでもない!」


「ほ、ほんとうですかえ!?」


「ああ、密偵を依頼するようなやつを根絶しなければ、今後お前のような輩が次々現れるだろう。だが、お前が白状すれば、このような不埒な活動の根源を立つことが出来る。お前の命も許してやる」


「そ、そうですかい!」


結局金で俺たちの側についたような男だ。

容易に裏切るだろう。

この展開もゲーム通りだ。


「カイトさん、ギリトさんが私達のことをきっと話しますよ。そうすると、まずいのでは……」


慌てふためくアオイ。

先程の涙はもう乾いていた。


「カイト、今から逃げる準備をしておいた方がいいわよ。お姉さんが色気で追手を引き付けておくわん!ああ!むらむらしてきた!」


腰をくねらせながら、魔導書に手を掛けるエミリア。

新しく覚えた闇魔法を使いたくてたまらないのだろうか。

性欲と魔力が混在したやべえ女だ。


「……だけど、不思議ですね、なんでギリトさんが密偵だなんてバレたんでしょうか?」


中庭で、今にも俺たちのことを喋り出しそうなギリトを見ながら、アオイが呟く。


これはあいつの置き土産だな。

リムルの奴が犯人だ。

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