第35話 ムカつく奴遂に初登場。お前なんかとは会いたくねーけど、仕方ねーから会ってやんよ!

「君が、カイト君だね」


爽やかな感じで声を掛けて来たのは、なんと……


リムル……


そう、あのリムルだ。


ゲームでは俺のパーティメンバーにして、最終的には俺をあるイベントで裏切り惨殺した男……

俺は怒りで今にも殴り掛かりそうなのを必死でこらえた。


「まさかこんなところで偶然出会えるなんて、僕は何て運がいいんだ」


短い黒髪を垂らし、細い黒い眉。

真っ黒な瞳。

きゅっと引き締められた真っ赤な唇。

逆三角形の顔。

細身の体は、黒いコートで覆われている。

腰には剣を刺し、物には毒針を仕込んでいる。


俺はこの時点での奴の容姿を見なくともすべて把握している。


憎らしい相手のこと程詳しくなるものだ。


「誰だ?お前は?」


俺はゲーム通りのセリフを吐く。

カイトがリムルと初対面の時に発した言葉をそのまま。


「ああ、今日王様と話した時にね、闘技場で優勝した凄い奴がいるって聞いたんだ。だから、どんな人だろうって思って、探してたらこんなところにいたなんて」


リムルは目を細め爽やかな笑顔で俺に言う。

好印象の塊みたいな奴だ。

その容姿と爽やかさで、行く先々の女を虜にして行くストーリーはまさに王道の英雄譚だった。

彼のファンも多くグッズや外伝ストーリーのゲーム、ラノベ、漫画、そして2Dライブはキラーコンテンツだ。


「ふぅん……」


俺は努めて平静を装う。

怒りを抑えるのに必死だ。


「ほんと、偶然ってすごいね。カイト君と出会えるなんて嬉しいよ」


だが、この出会いは奴にとっては偶然でも、俺にとっては必然だ。


仕組んだのは俺なのだ。


ゲームでの奴の行動を知る俺だから出来たこと。


王都バイムで闘技場で優勝すれば、名声が上がり、王様の耳に届く。

そして、王様と謁見したリムルは俺の存在を知り、俺に興味を持つ。

期間限定のイベントだ。

だから俺はミノタウロスの洞窟でのレベリング期間を決めていた。

余り長い時間いると、リムルの王都滞在を逃してしまうから。

ギリギリ間に合ったんだ。


ここで奴とファーストコンタクトを取り、最初の屈辱を与えるために!

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