第31話 女の嫉妬は怖すぎる。修羅場を制したのは……

「むおおお!」


日本刀を持つカシュアの腕が炎に包まれた。


フィーナのスキル『怒り』が発動した。

これは体力が1の時に、相手の攻撃を1/10の確率で避けて返り討ちをヒットさせるスキルだ。


死の恐怖に耐えながらも、起死回生を図ったフィーナ。


お見事!


俺は心の中でフィーナを褒めたたえた。


「くっ、生意気な!」


詠唱中のエミリアが悔しそうに唇を噛む。

そのせいで、詠唱がやり直しになり、更に苛立っている。

闇魔法は強力だが、発動させるまでに長い詠唱が必要なのだ。

その間何も出来ないのが闇術師の欠点だ。


「治癒魔法中!」


アオイの治癒魔法で、フィーナの体力が回復した。


よし!


ここから、反撃だ。


「くっ!カシュア、生意気なアオイをやってしまいな!」


声を荒げるエミリア。

美しい顔が怒りに歪んでいる。

自分が追放したメンバーがいるパーティにやられるのがそんなに悔しいか。


「エミリア……やはり、俺には無理だ」


「え?」


カシュアの反論に目を点にするエミリア。


どういうことだ?


「やっぱり、俺は元仲間……そして、愛した女は殺せない……エミリア、お前の頼みでも無理だ」


カシュアが日本刀を持った手をだらりと下げた。

戦意を失ったらしい。


「くっ、カシュア、私の恩を忘れたのか?」


「いや、忘れていない。だが……俺も人の子だ」


「くっ……どいつもこいつも!」


もはや戦いは中断していた。


「なにやってんだ!戦え!」


客席からヤジが飛び交う。


「うるせー!いま、大事な話してんだぞ!」


俺はヤジを言った奴らを怒鳴りつけた。


エミリアが泣いている。

怒ったり泣いたり感情が激しい奴だな。


あ、分かったぞ。


アオイが追放された理由。


アオイの能力が低い訳じゃない。

エミリアがアオイに嫉妬したからだ!

エミリアは自分が好きなカシュアが、自分でなくアオイのことが好きなのを嫉妬して、それで洞窟に置き去りにしたんだ。

そして、カシュアはエミリアに逆らえない理由があったのだろう。

その時は従ったが、今は心変わりしたようだ。


「仕方ない!カシュア、お前は裏切り者だ!アオイもろとも我が、メジュサで死ぬがいい!」


エミリアが下がりながら詠唱を始める。

だが……


「話はおわったようだな」


一歩早く状況を予測していたフィーナがエミリアに襲い掛かる。


「待って!」


そのフィーナの前にアオイが両手を広げて立ちふさがった。


「なんだ?ピンク頭?」


「やっぱり……、こ……殺したくない。この人は私を捨てた……人だ……けど、元パーティメンバーで……仲間だったから!」


両目から涙を流ししゃくりあげるアオイ。


自分を裏切った奴らを許すというのか……


「アオイ……」


穏やかな表情になるエミリア。

そして、


「私が間違っていたわ」


そして、彼女は負けを宣言した。

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