第26話 結婚を迫られてどう断っていいのか分からない俺!

「ところで、この後、ちょっと闘技場いこーぜ」


腹いっぱいの俺はお茶をすすりながらそう言った。


「闘技場!?ですか!こわいですぅ!」


「……」


フィーナはいちいちオーバーアクションするアオイを無視するようになっていた。


「大丈夫。俺がキチンとお前らを守るから」


怯えるアオイに自信たっぷりに俺は言ってやった。


「はっ、はい!」


アオイは俺の言葉に頬を染める。

こりゃあ今日あたり親交度は100になるだろう。


「なんで……闘技場?」


フィーナがお茶をすすりながら、予想通りの質問を投げかける。


「ああ。大きな声じゃ言えないが、俺は魔王を倒そうと思ってる」


「魔王を倒す!!!?」


ガターン!


アオイが席から勢いよく立ち上がる。

その勢いで椅子が後ろに倒れた。


「アオイ!落ち着け!」


まだ、周りに知られたくない。


「なんだ、なんだ?」

「魔王だって」

「頭おかしいんじゃないかしら」


周囲が不思議そうに俺たちを見る。


よかった……


まだ、この世界の人間達にとって魔王は現実的な話ではないみたいだ。

ゲーム序盤、世界ではモンスターがちらほら出現するようになる。

だが、そのことが魔王復活と結びつき始めるのはゲームが中盤に差し掛かるころだ。

まだ魔王復活は、一部の王族だけが知る秘密のような感じだった。


「アオイ、黙って聞いてくれ。俺はこの世界を救うんだ。そのためにはゴルドと力が必要なんだ」


俺の言葉には裏がある。

世界はきっと憎い勇者リムルによって救われるだろう。

今頃やつも活動し始めているはず。

俺は奴がこれからクリアするであろうイベントや、手に入れるであろう仲間や宝を先回りして手に入れる。

そのために、ゴルドと力が必要だった。

闘技場はその二つを効率よく稼ぐことが出来る場所だ。


「世界を救うなんてかっこいいですぅ!」


アオイは目をキラキラさせて俺を見つめている。


アオイの親交度が100になった。


ミナミの声が脳内に響く。


なんと、このタイミングでアオイと俺の親交度がMAXに達した。


アオイと結婚する?


ミナミが問い掛ける。


「カイトさぁん……」


今度は目がハートマークになっている……


俺は結婚するならアイラ姫と決めていた。

アイラ姫は王都バイムにいる。

バイム五世の娘にして、剣姫の二つ名を持つ勇ましくも可愛い女性だ。


フィーナやアオイとはまだ結婚する気は無かった。


「カイトさん。私、料理上手なんですよぉ」


「う、うむ」


「子供は十人は欲しいですぅ」


「……む」


「家は王都の中の一等地に……」


俺は女の子にこんなに迫られたことが無い。

正直、断り方が分からない。

彼女の悲しむ顔が見たくない。


ドスっ!


「ぐっ……!」


アオイが脇腹を抑え食卓に突っ伏す。


「バカが……場所をわきまえろ」


フィーナが鋭いエルボーをアオイの脇腹に喰らわしていた。


グッジョブ!

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