第25話 お昼の時間。今日は何を食べようかな?

ギリトがカイトの密偵になった。


ミナミの声が脳内に響く。

ゲームではパーティメンバーとは別に三人の密偵を雇うことが出来る。

報酬をきちんと与えれば、ある程度言うことを聞いてくれる。

俺がギリトを選んだ理由は簡単だ。

王都の兵士だから城に潜入させて情報収集が出来るからだ。


「門番の仕事が終わったら、酒場に来い。打ち合わせしようぜ」


俺はギリトの肩をポンと叩いて、街へ向かった。



「うわぁー!久々の王都ですぅ!」


ピンク髪をフワフワさせながら、テンションアップさせるアオイ。

子供みたいに飛び跳ねてる。


「……ふん。ガキが……」


その様子を、吐き捨てる様にバカにするフィーナ。


「さてと、まずは飯にするか」


太陽は真上に昇り、真昼間だ。

腹が減って来た。

手近な店に入って飯を食いたい。


「ここ、ここ!」


アオイが指差す先にある店は、ステーキショップ満肉屋。


「ああ、ここはやめとけ。遅い、まずい、高い」


「え~!そうかなあ。良い匂いしますよ。カイトはここで食べたことあるのですか?」


「いや……まぁ……」


食べたのはゲームでのカイトの時だ。

ゲームだから味などしない。

だが、体力は余り回復しなかったし、何より高いのだ。

その後、腹を壊して体力ゲージが半分まで減った。

まずいのに高いくせして、挙句に体調不良を引き起こすなんて、許せない店だと、俺はコントローラーを投げつけた。


ちなみに主人の職業は料理人で、まずい料理を敵に投げつけて倒すという、美味しんぼもビックリのキャラクターだ。


「あれが……いい……」


フィーナが指差す先にある店は、マグロ屋太郎。


「うん。ここならいいぜ」


ゲームではなかなかコスパのいい店だった。

ちなみに美味い物を食べると、一定確率でステータスが上がることがある。

上手い料理を食べると幸福を感じて、幸福度が少し上がったり、良い肉を食べると良質のたんぱく質になって攻撃力が上がったりする。

ゲームでもそうだから、ゲームが現実化したこの世界でも同じことだろう。


「いらっしゃい!」


ねじり鉢巻きに禿げ頭の店主が威勢のいい声で出迎える。


「俺、海鮮ちらし」

「あたし、刺身定食です」

「……ツナサンド」


「はい、おまちぃ!」


フィーナは目の前のツナサンドにかぶりついた。

よっぽど腹が減っていたのかむさぼるように食っている。

普段の冷静な態度とは大違いだ。


「おいおいフィーナ。落ち着け。取らないよ」


「そうですよ。フィーナさん。いじきたないなあ」


「うるさい。生命を維持するために必要な行為だ。ひいては、魔導探求のためでもある」


低い声で言い訳してみても、口元にマヨネーズついてるぞ。

フィーナ。


確かフィーナってば、猫の血が混じってる設定だったな。

母親が猫人だった。

その設定から、ツナが大好きなんだろう。


よく見ると、瞳が猫の様に縦線になっているし……

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