第24話 密偵を雇った俺は、こいつで主人公の動静を探る

王都バイム。


『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』に存在する王都の一つ。


この世界は四人の王と、一人の聖女によって統治されている。

そこに魔王が復活したところからストーリーは始まっていた。

どのプレイヤーを選んでも、魔王を倒すという目的は共通していた。


「さて、ついた」


俺は王都の門の前に立つ。


門の前にはすごい行列。


実は王都は魔物の襲来が始まってから壁を作ったという設定だ。


王都は四角く高い壁に囲われていて、許可を受けた者しか門を通って中に入ることは出来ない。


「さて、中に入ると行きたいところだが……」


俺は通行証を持っていなかった。

王都にはいるためには必須のものだ。

ま、身分証明書みたいなものだ。

フィーナとアオイはいっちょ前に持っていた。


「ま、それはそれでいいけどね」


俺は出費が少なく済んでラッキーだと思った。


俺たちは行列の最後尾並んだ。

待つこと一時間。


「通行証を見せろ」


兵士が偉そうな声で言う。

ギョロ目で樽みたいに丸い身体。

鉄の鎧が太陽に当たって光っている。


「はい」

「……」


女の子二人は難なく門を通り過ぎ、王都の中へ。


俺はというと……


「ない」


「は?なめてんのか?」


「ないものはない」


「てめーころすぞ」


口の悪さはゲームの時と変わっていない門番兵。

ちなみにこいつもプレイヤーとして選択できる。

スタート地点はもちろん門からだ。


レベル:10

名前:ギリト

年齢:31

体力:200

精神力:153

攻撃力:125

防御力:140

幸運:11

早さ:5

職業:兵士


ハッキリ言って平凡な奴で、ストーリーも盛り上がりに欠けて面白くないから選ぶ奴は少ない。

パーティのメンバーにしたところで、壁役を無難にこなす程度だ。

いわゆるモブキャラだが、使い道はある。


「金ならある」


「は?」


俺はそっとやつの手に1000ゴルド握らせた。


「分かった」


ギリトは頷いた。


通行許可が出た。


こいつは兵士失格だ。


ゲームでもこうやって門を突破出来た。

このまま門を通ってもいい。

だが、攻略動画で確認したところ、もう一度会話することによって展開が変わる。


「もう少し金をやる。だから密偵になれ。俺たちの」


「は?」


ギリトは目を見開いた。


「もう俺たちは共犯だ。お前も金で無許可のものを通したと告げ口されたくなければ、俺に従え。給料はちゃんと出すから」


俺はこうして、密偵を雇った。

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