第23話 ハーレム展開で俺はほくそ笑む。

ミノタウロスを撃破した俺達一行は、洞窟を出た。


外に出ると、すっかり日が暮れていた。


荒涼な大地を月明りが照らしている。


「今日は野営だな」


俺がボソッと呟く。


「うれしい!カイトさんと一緒に夜を過ごせるなんて!」


はしゃぐアオイ。


「うるさい、バカが……」


フィーナが吐き捨てる様にがボソッと呟く。

そのつぶやきが耳に入ったのか、アオイがキッとフィーナを睨み、尖った声を上げた。


「フィーナさん」


「なんだ?ピンク頭」


「ピンク頭じゃありません!私の名前はアオイです!」


「ピンクのくせにアオイか……。まったくそんな名前を付けた親の顔が見てみたいな」


「もう!パパとママのこと悪く言うと許さない!」


「……ふん」


「まぁまぁ、二人とも」


間に入って二人をなだめる俺。


フィーナとアオイの仲が悪いのは俺のせいかもしれない。


どうやらアオイは俺に惚れたらしい。

今では親交度が99になっている。

あと1でも上がって100になれば、結婚相手候補として選択可能になる。

ゲームと全く同じシステムだ。

プレイヤーはパーティメンバーと親交度100で結婚出来る。

男女でもOKだし、同性でもOKだ。

そこは、昨今の多様性を尊重したゲーム設計になっていた。

ただ、男女でないと子供は生まれないが……

この世界での結婚のメリットについては後程語ろう。


アオイは俺に助けられたことで、急激に俺への信頼と愛を強めている。

しかも一方的にだ。


そして、厄介なことに、それを横目に見ているフィーナが嫉妬し始めた。

もちろん俺にだ。

フィーナはフィーナでミノタウロスを倒してくれた俺に感謝していた。

ミノタウロスは彼女にとって両親の仇。

それを、俺がたおしたのだから、仇を討ってくれた恩人だ。


そんなフィーナも俺に対する親交度を上げていて、その値は50に達していた。


「ハーレム展開ってやつだなこれ」


現実世界でもこれだけ女の子にチヤホヤされたことのない俺は、少々舞い上がって来た。


当初の目的通り俺は王都を目指すことにした。


「あたしはカイトさんに着いて行く!」


二つ返事のアオイ。

フィーナはというと……


「……」


沈黙。


「フィーナは王都に用事なんて無いんだろ?ミノタウロスを倒したら故郷の村に帰るんじゃなかったっけ?」


俺が探るように問い掛けると、


「……帰っても暇だし……魔導の道も深めてみたいから……」


俯き加減に歯切れ悪く言う。

俺は予想通りの応えに、笑みが漏れそうになる。

フィーナに対して少し意地悪を言って、自分への愛を確認してみたかったのだ。

頬を少し赤く染めたフィーナは、明らかに俺に惚れ始めている。

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