第21話 俺の命を救ったアイテムの秘密とは……

「おい!ピンク頭!なにしてるっ!」


フィーナに怒鳴られるアオイ。

普段は大声を出さず、低い声でチクリと文句を言うフィーナだから、余計に響くかと思ったら……


「うるさい!うるさい!うるさいです!私をこんなことに巻き込んで、ただじゃおかないです!」


いつもは怯むところだが、アオイは目を三角に釣り上げて怒っている。

窮鼠猫を噛むってやつか……

む、嚙む相手はフィーナじゃなくて、焼肉ことミノタウロスだがな……


「……って、悠長なこと想ってる場合じゃねーよ!」


俺は一旦ひくことにした。

体力が一気に半分も減らされて、ちょっと死が怖くなった。


「カイト、お前までっ!」


フィーナが俺を睨みつける。

……そんなこと言ったって……


フィーナよ、元々はお前の両親の仇討ちに、俺とアオイは付き合わされているんだぞ!


だから、俺もアオイの気持ちがよく分かる。


ちょっとは、俺らのことも心配してくれや。


「ぶるるるる!」


フォーメーションが乱れ始めた俺たちパーティを、怒り狂うミノタウロスが見過ごすはずも無かった。

角を前に突き出し、突っ込んで来る。


「猛牛突進!」


土煙を巻き上げ、地を揺らしながら、俺に突っ込んで来た。


「やられる!」


……って、え?


ミノタウロスは俺の真横を通り過ぎて行った。


ほっ、よかった。


……って、もしかしてその先には……


アオイ!


逃げるでもなく、顔面蒼白ピンク髪の少女がそこにいた。

いた、っていうよりも、固まっていた。

余りの恐ろしさに金縛り状態。


「くっ!」


アオイが一瞬、泣き叫ぶ美憂の顔と重なる。


そうだった。

あの時、通り魔に襲われた美憂もおんなじ顔だった。


俺は自然に足が動いていた。


ドスッ!


「え……?」


「へへ、どうやら急所だけは外すことは出来たみてえだな……」


俺の左胸にはミノタウロスの角が刺さっていた。

だが、俺は幸い死んでいない。

ギリ生きている。

体力は1。

そして、俺の心臓を守ってくれたのは他でもない。

カイトの妹、メイアが俺に手渡してくれたペンダント。


『アダマンタイト竜のペンダント』


この世界で最も硬い素材アダマンタイト。

その竜の鱗から作られたペンダントだ。


実はメイアは初期装備としてこのペンダントを持っている。

実は、彼女はカイトの妹ではなく、伝説の竜族の娘という設定で、カイトの両親が村のはずれで拾って来たというストーリー設定だ。

プレイヤーでメイアを選択すれば、竜族の娘としてのストーリー展開を楽しめる。

だから、ゲームでメイアを選ぶプレイヤーは多い。


そして、俺がなんでこのペンダントを持っているかというと……

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