第13話 このゲームでプレイヤーを選ぶということの意味

ミノタウロスの洞窟


そこに足を一歩踏み入れた時、ミナミがそう言った。

その名の通り、最下層にはミノタウロスがいる。

今の俺のレベルでは太刀打ちできない存在だ。


この洞窟は地下10階まであり、下段に行くごとにモンスターが強くなっていく。

地下1階から、レベル10くらいで、パーティを組んでいないと勝てないモンスターが出て来る。


このゲームの特徴として、全てのプレイヤーを選択できるというのは既に話したと思うが、そのせいで、プレイヤーによっては有利不利がはっきり分かれることになるんだ。


つまり、何が言いたいかって言うと、選んだプレイヤーによって大きく難易度が変わるってことだ。


例えば、王様を選べばいきなり沢山の金や武器、防具、そして下僕が揃った状態で冒険を開始できる。

その反対に、カイトみたいなただの村人は何も持たない弱者として放り出される。


そして、冒険のスタート地点は、選んだプレイヤーによって異なっている。


王様だと安全な城の中からスタートするし、森に住む部族の男を選んだら、いきなり強いモンスターに囲まれた状態からスタートする。


だから、プレイヤー選びは慎重にならないといけない。


カイトの場合、スタート地点の村に近い場所に、他のプレイヤーなら中盤辺りで挑戦するダンジョンがある、それだけの話だ。


ハードモードを楽しみたければ弱い者を選んで、縛りプレイみたいに楽しめるし、イージーモードでサクサク進みたければ王様や騎士を選べばいい。


『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』の楽しさは、この選んだプレイヤーによって境遇が変わる運というかガチャの要素で、ゲーム展開が変わるところだ。


だが、今の俺はゲームの世界が現実になっている。


そんなことを楽しめる余裕が無い。


それでも最弱のカイトを選んだ理由。

『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』を理不尽な勇者リムルのせいで中断させられたことに対する恨みを晴らしたいからだ。


今の俺ならできる。

ゲームの全てが頭に入っているのだ。


美憂にも会いたい。


そして、現世に帰り、あの謎を解く必要がある。


「よし!」


俺は自分を鼓舞した。


ゲームでは、一度でも死ねば終わり。


セーブデータもろとも消える。


ドラクエみたいに教会からリスタートはない。


そこが面白いところだ……。


が、


ここがゲームと同じ世界なら、一度死ねば生き返ることは出来ない。


ここでの死は、本当の死だ。


ミノタウロスの洞窟。


ハッキリ言って、レベル2の俺が挑むのは無謀だ。


だが、しかし--


今の俺には金の剣がある。


まず、この階層でレベル10まで上げたい。

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