第11話 俺だけが知ってる理不尽イベントでチートアイテムゲット!

俺はこうして村を出た。

武器など持たない丸腰状態だ。


「早く武器を手に入れないと……」


俺は地図を思い出そうとして、やめた。


「ミナミ、地図を出してくれ」


「はい」


虚空に地図が浮かんだ。

出た。

『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』の世界地図だ。

ミナミはゲームのナビゲーター役だからこう言うことも出来る。

だが、残念なことにカイトが把握しているボッカケ村の辺りしかプロットされていない。


「仕方ない。記憶を頼りに進むか」


俺は森を歩いている。

ある泉を目指した。

モンスターに出会わないことを祈るばかりだ。


「あった!」


森の奥の泉。

ここにアレがあるはずだ。


「さて、と」


俺は木の棒を拾った。


アレを手に入れるための大事なアイテムだ。


泉まであと少し。


「グアアアアア!」


咆哮が森にこだまする。

しまった!

獰猛な猪モンスター、エブルボアに見つかった。

銅の剣を持っていれば今のカイトでも勝てるが、まだ手に入れていない。

ゲームでは手に入れる前にこいつと遭遇して、よくゲームオーバーになったものだ。


「ブルルル!」


追い掛けて来るエブルボアに対して、俺は必死に走った。

奴とのまだ距離はある。

泉は目と鼻の先だ。


「そりゃ!」


俺は木の棒を投げた。


ポちゃん!


木の棒が泉に波紋を作ると同時に、水が盛り上がり、中から女性が現れた。

美しい泉の精だ。

泉の精は、水色の髪と水色のドレスを着ている。


「お前か?この金の剣を落としたのは?」


「いいえ」


「では、この木の棒か?」


「はい」


「して、これはお前のものか?」


「はい」


「本当か?」


「はい」


「本当か?」


「はい」


このやり取りを100回続けた。

そして、


「よくぞ正直に答えた。お前にはこの金の剣を与えよう」


そう言い残して、泉の精は水の中に潜って行った。


「よっしゃ!序盤にして最強のアイテム!金の剣ゲット!」


やり取りを100回続ける根気が必要だ。

たいがい、5、6回で、「いいえ」と応えないと先に進まないと思う心理を突いた、理不尽なイベント。

もし、根負けして「いいえ」と応えたら、ランダムで「銅の剣」がもらえる。

泉の精の機嫌によっては何も貰えない場合もある。


兎に角、


俺が手に入れたかったチートアイテムその1。

アレを手に入れるために必要だ。

そして、突進して来るエブルボアを倒すためにも必要だ。


「おりゃ!」


「ブヒイイイ!」


金の剣で真っ二つだ。

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