第9話 過去の記憶を掘り起こして、有利に生きよう

カイトが何で村の外に出たいのか。

俺はゲームでのカイトのセリフや行動を辿った。

ゲームの中で彼は、貧乏な生活が嫌で、金を稼ぐために村を出て王都で職にありつこうとしていた。

だが、両親に止められていた。

村の外は危険なモンスターが現れるようになっていた。

武装したうえで集団で外に出るのが普通で、単身村を出て王都に向かうのは危険だった。


「と、いうことで俺ことカイトはどうやって村を出たんだっけ?」


食事の後、一人、ベッドに座り考える。


俺は更にゲームでの記憶を掘り起こす。

まず村を出ないと話が始まらない。

非力なカイトの武器は、俺のゲームでの記憶だけだ。

誰がどんな行動をして、どんな情報を持っているか?

どこにどんなモンスターが出て来るか?

ダンジョンの構造はどうなっているか?

どこにお宝があるのか?

どんなイベントが発生するのか?


それらの情報が全て俺の頭には入っているはずだ。


そして、憎き勇者リムルが今どこで何をしているかも知っていた。


あれこれ、これからの展開を考えているうちに、すごい眠気が襲って来た。


俺は村から出る方法を思い出せないでいた。


あれ?

眠くなるんだ。

ゲームの世界であって、ゲームと違うところは、身体が疲れて眠くなること……

なんだろ……う……



ちゅん、ちゅん……


窓から差す光で目が覚める。


「お兄ちゃーん!朝ごはんだよ!」


妹のメイアが俺に馬乗りになっている。

なんて大胆な女の子なんだ。


「さ、カイト!今日も頑張って収穫するぞ!」


ゴンズがパンを口に運びながら、張り切って言う。


カイトの家は農家で、ジャガイモを畑で作っていた。

親父と一緒にジャガイモを掘る。


「カイト、これ、運んでくれ」


ゴンズからジャガイモが入った籠を背負わされ、村長のところへ行けと言う。


こんなことやってる場合じゃないんだけどなあ


そう思いながら、村長の家に向かう。


「おい、カイト!」


低い意地悪そうな声の先には、男が三人いた。



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