第5話 理不尽イベントでゲーム強制終了された恨みが俺を駆り立てる!

『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』を発売日に手に入れた俺は、その日から夢中で遊んだ。

学校をさぼりがちになったのは言うまでもない。


それだけはまり込んだゲームだった。


だが、中盤で思いもかけないことが起きた。


俺はプレイヤーとしてモブキャラの村人カイトを選択した。

死んだらやり直しがきかないシビアな設定なので、十分にレベル上げをして、イベントボスを倒していった。

仲間十分に強い奴を選んだ。

その一人に、主人公のリムルがいた。


そして、あるイベントでリムルが俺に反逆して来た。


そこでゲームが終わったんだ。


バグかと思う程の理不尽な展開に俺はゲーム機を叩き壊していた。

なんなら、ゲーム会社に殴り込みたい気分だった。


だが、俺の気持ちはゲームを辞めた後も、『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』への関心を強めて行った。


恥ずかしながら、未練がましくゲームの攻略動画を観たり、サイトを閲覧してその後の展開を確認していた。

そんななかで、ラスボスを倒したという者も現れ始めた。

多くは主人公であるリムルで倒したという。

俺が確認した限りではカイトでクリアした者はいなかった。

それはやはり、あの理不尽なイベントのせいだろう。


俺は不完全燃焼のまま、この冬に出ると噂の『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち2』を買うかどうか迷っていた。


そんなある日、俺は妹の美憂と一緒にイオンモールに買い物に行っていたんだ。

美憂は中学一年生で、どうやら最近、彼氏が出来たらしい。

俺に恥ずかしそうに、男はどんなプレゼントが喜ぶか訊いて来た。

彼氏の誕生日プレゼント。


くぅ、うらやましいぜ。


俺とは正反対の明るい性格で可愛い容姿の美憂は、学校のアイドルだ。

そんな女と付き合えるなんて、うらやましいぜ。


「じゃ、お兄ちゃんと一緒に買い物しながら選ぼうか?」


俺は普段一緒に歩いてくれない美憂と歩けて嬉しい。

周りの視線を感じる。

皆、俺を美憂の彼氏だと勘違いしているような視線。


「お、こういう財布とかどうだ?」


俺は黒い革財布を似てした。


「う~ん、どうかな」


美憂は大きな黒い瞳でその財布をじっと見ていた。


「きゃー!」


その時、背後から悲鳴が聞こえた。

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