第5話 ねだられても

「ね。もう少しだけ見てたいの。お願い」


 ウルウルした目で見上げてくるのは、一番下の妹。


 どうして下の子ってのは、要領を得てるんだろうなぁ。

 どこかで学ぶのか、研究でもしてるのか。

 あざとい角度に首をかしげ、可愛く作った声を出す。


 しかし。だからと言って、そのお願いがいつも通るとは限らない。

 ましてや、今回は違うだろう。


「ダメだよ。昨日買ってきたばっかりだろ。お前が見てると、用心してエサ食べに来ないよ」


 水槽に散らしたエサに、目の前でメダカが群がってくれるには、まだ時間がかかる。

 妹のおねだり作戦。

 僕はもちろん、メダカに通じるはずがない。


「慣れるまで、離れてろよ」


 ぷう。


 不満げに頬を膨らませた妹は。

 水槽下に頭一つ隠して、メダカの様子をのぞいてた。

 執念だなぁ。と、僕は思った。



       ― おわり ―

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