第4話 プライドとは?

「母さん? 何してんの?」


 母さんが、すんごい形相カオして何か頑張ってる。


「ぐ、ぐくく……。もう少しで。もう少しだけ、お腹へこませたら、入学式の時のスーツが着れそうなの」


 …………。

 そーいや、もうすぐ卒業式だっけ?

 数年前のスカート、ホック部分の左右を必死で引き寄せているけども。


「え、でもさ。ジャケットの腕周りが既にアウトなんじゃない?」


 下が入ったところで、上は?


 素朴な疑問が口をついた途端、コロニャで体重増加した母上様の目が、丸くなった。

 しまった! 言い方間違えた?


「新しいの、買うわ」


 母上様はあっさりと、スカートを諦めた。


「そもそも入学式の明るいスーツカラーって、卒業式には軽すぎるわよね」

「そ、うなんだ?」


 これ以上は、追及してはならない。

 母さんのスーツ、ダーク系じゃん、なんて言ってはいけないのだ。

 

 僕は何も見てないし、聞いてない。


 お茶とお菓子を片手に、僕は部屋へと戻った。



       ― おわり ―

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