第16話 両思い

「私はあの頃からずっと、悠矢が好きだよ」

それは、私があの頃から言えなかった言葉だった。なのに、今はすんなりと伝えることが出来た。

「鈴」

その低い声は、私を現実に引き戻した。

「・・・・」

きっと、断られる。何言ってんの?って笑われて終わる。

「お前、俺にもいいとこ作らせろよ」

「え?」

「俺も、あの頃から、お前が好きだ」

・・・・これは、夢?

「俺が告白してるのを夢にしようとするな」

「え、夢だよ?」

そう、これは夢だ。私のためにバスケットボールしてたっていうのから、きっと夢。

何もかも、私に都合が良すぎる。

「なんで、すべてわかってるみたいな風に言うんだよ。鈴は俺を待っててくれたんだろ?」

今聞くと恥ずかしくなってきた。

「悠矢、お願いだから忘れて!」

「じゃあ、忘れる」

「ありがとう!」

「けど、鈴はそのかわりに、信じろ。俺が鈴を好きだってことを現実だと認めろよ」

「・・・・え」

まって、待って。つまり・・・・

「俺等は両思いってことも、忘れるなよ」

凄く恥ずかしい。

けど、嬉しくて幸せな私だった。

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