第14話 私に見つけてもらう為

「な、なんで、そんな事、言う、の?」

私が最初に言えた言葉は、それだった。

「バスケットボールを、そんな風に言わないで!」

言葉は、気をつけないといけないのに。

考えて話さないといけないのに。

「どうでもよかった?なら、悠矢を、あの眩しかった悠矢を、楽しそうにバスケットボールをしている悠矢を応援していた私は、馬鹿だった!」

そう思っていても、感情が収まらない。

私は、何を言っているんだろう。

バスケットボールが好きなわけじゃないのに。

ルールも知らないのに。

悠矢しか見てないのに。

全部、私が悪いのに。

「・・・・俺が、バスケットボール、してたの、お前の為だよ」

「人の為に、今までバスケットボールしてたって言うの・・・・え?」

今、誰の為って、言った?

「お前に、見つけてもらう為に、自分が出来そうなスポーツだった、バスケットボールをしてた」

私に、見つけてもらう為・・・・?

「な、なんで?私、バスケットボールなんてしてなかったし、見つける確証なんてないでしょ?」

そう、だよ。

私は、悠矢がバスケットボール選手になるって言うから見てただけ、なのに・・・・。

「・・・・鈴は見てくれないかもしれない。それでも、鈴に忘れられない方法が、それしか、思いつかなかった」

『バスケットボール選手になる!』

そんな事を言われてしまったら、見ないわけにいかないのに。

それに、そもそも忘れるわけがないのに。

忘れられる訳がないのに。

「馬鹿・・・・」

私も、悠矢も、馬鹿だな、本当に・・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る