第4話 信じたくない俺と泣く彼女 By三和

昨日、声を掛けられたことが忘れられなくて、早朝から家を出た。昨日彼女が降りた駅へ始発で向かい、彼女を待ち伏せていた。

彼女は普通の通学時間に駅に来た。

「お、おい!」

目があったのにも関わらず、スルーされたので、

彼女を呼び止めた。

「お前、昨日俺を呼び止めたよな?」

「は、はい」

「・・・・名前は?」

確認しておきたかった。俺が会いたかった人なのかを。俺が勝手に妄想しているんだとしたら、なんて、考えたくもない。傷つきたくない。


「っ、ごめんなさい。人違いだったみたいで」

「ひ、人違い、だと?」

人違いな訳が無い。わかってる。今まで会った誰よりも会いたかった人に似ているのに。

「はい。私の知り合いに、あなたに似た人が居たものですから」

もしかしたら、本当に勘違いなのかもしれない。俺の、勘違い・・・・

え?

「嘘、つくなよ」

「・・・・え?」

「泣いてるんだ、誰でも分かる」

人違いだと言い張る彼女は泣いていた。

「な、泣いてない、です・・・・」

「泣いてるだろ、自分でもわかってるくせに」

そういうと彼女は潤んだ目を俺に向けた。

「な、なんでそんな事言うの・・・・?」

え、俺、なんか変なこと言ったか?

「な、なんで泣くんだよ。わ、悪かったよ・・・・」

「あぁぁぁぁー」

俺の声を聞いて、大声で泣く彼女に驚きながら、俺は彼女の肩を抱いて、近くの駅で降りた。


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