第20話 自己肯定感の低い君 By 池谷

「わ、私!こないだ、池谷くんが『僕、もう、一緒にいないほうがいいかも』って、言った時、何を言われてるのかわからくて。でも、今日まで、目すら合わなくて、それで、池谷くんはそのつもりなんだってわかったよ」

伝えたいことがあると言われて、何かと思ったら、由紀子がそう話しだした。

「私が池谷くんに助けてくれたお礼として言っていたのは一週間で、もう、それも最後だから、そのまま、解消しても良かった」

そうだろう。この間の会話からして、僕に振り向いてもらえる可能性はないだろうから。

「けど、私、凄く、寂しかった」

・・・・え?

「・・・・僕のこと、怖いんじゃないの?」

僕は思わず、そう呟いていた。

「え?」

「この間、クラスの人に『痴漢と同じような恐怖を感じた』って、言ってたから」

あの時は怖がらせてしまったと気がついて、せっかく再会したけれど、もう、無理かもしれないと思った。

「あの日は、怖かったよ。急に知らない人から、後ろから抱きしめられたから、怖かった。けど、今は怖くない」

僕のことが怖いのなら、今まで、僕のことを信じなかったことも理解できた。

けど、怖くないなら。それなら、どうして・・・・

「・・・・じゃあ、何で、信じてくれないの?」

「じ、自信が、なかったの」

「自信?」

「わ、私の、事を、言ってくれているのかもって、思う、自信。自惚れるだけの、自己肯定感が、無かった」

ああ、確かに小学校の時よりも、俯いていた。

僕が知らない3年の間に、自己肯定感が下がってしまうような出来事があったのだろう。

「・・・・悪いことじゃないよ」

「え?」

「これから、僕が、嫌と言うほど由紀子、君を、愛して、自己肯定感を上げさせればいいだけだから」

「・・・・」

・・・・!

さ、流石に言い過ぎただろうか?ついこの間、反省したばかりなのに。

「・・・・本当に、私であってる?」

ここまで言っていても、まだ、疑っている。

その彼女を見て、過去に何があったのか、気になって仕方がない。

「僕と同じ小学校に通っていた、由紀子は、君しかいないだろ?」

僕は、今までの説得のような口調ではなく、普段通りの口調でそういった。彼女を本当に愛しているのだと、自己肯定感の低い彼女に伝わるように。

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