第16話 自覚する気持ち
駅で別れてから、私達は変わった。
私は一人で学校に行って、一人で家に帰る日常に戻った。学校でも全く話さないし、目も合わない。
これが、普通。今まで通り。目立たない、私の日常。
どれだけ私自身に言い聞かせても、苦しくて苦しくて仕方がなかった。
そんな時、私を助けてくれた女性、飯野鈴さんから一緒にカフェに行こうと誘ってもらって、私は喜んでカフェに行くことにした。
「で、あの学生くんとはどんな感じ?」
「え?」
「距離は縮まった?それとも全く?」
「・・・・」
全く、なわけじゃない。
今も、私はずっと池谷くんのことを考えてる。
「ふーん。幸せって感じでもないね」
「な、なんで、わ、私とか、彼が、そ、そういう・・・・」
「うーん。勘?」
「か、勘?」
あの時は確か、まだ、少し怖がっていた頃だったはずなのに。
「うん。だって、好きでもない女の子、わざわざ危ないことだってわかってて痴漢から守らないでしょ?大人相手だし、結構勇気いることだからさ」
・・・・確かにそうだ。
逆の立場だったら、私は助けられただろうか?その問の答えはノーだ。
「お姉さんが聞いてあげるよ」
そう言ってもらえて、私は鈴さんに話した。
私達の出会いから、とりあえずあの事件の後までのことを。
「・・・・違ってたらごめんね?もしかしてさ、付き合った人、いない感じ?」
図星だった。
「悪いことじゃないけどね?もう少し、自信を持ったほうが良いと思うよ?」
「え?」
自信?どうして、私が自信を持てていないことが今、話題になっているのだろうか?
「学生くんが恋している人が『自分じゃない』なんて、どうして分かるの?」
あれ?そう言えばそうだ。
池谷くんが行ったのはただ、私を抱きしめたり、同じ電車に乗ったり、一緒に帰ったりしていただけだ。
池谷くんから、誰かの代わりにしているなんて話は全く聞いていない。
「で?それはいいとして、どうして会った時から暗い顔してるの?学生くんのこと、考えてる?」
もう、話さないわけにはいかなかった。
私達が一緒にいるようになったこと。話すようになったこと。クラスの誤解を解いたこと。その後、池谷くんの行動がおかしくなって、ここ数日一緒にいないこと。
「・・・・凄く、寂しいんです」
そう、寂しかった。いつも二人で歩いた場所を一人で歩くのは。クラスの皆が話しかけてくれても、この寂しさは消えなくて、誰でもいいわけじゃないってわかって。
「はぁ」
ため息をつかれてしまった。
「・・・・その気持ち、伝えた方がいいよ。お互い、このままなんて中途半端でしょ?はっきりしたほうが楽だと思うよ?」
「け、けど・・・・」
「伝えないと、このままだよ?」
「そ、それは嫌です!」
私ははっきりと言うことが出来た。
「でしょ?大丈夫。貴方が学生くんを怖がってないって伝えるだけだよ。一緒に帰ろう?って誘えるとな良しだけどね」
そ、それは、む、無理かも・・・・
「今度は二人でおいで。奢ってあげる」
鈴さんは私にそれだけ言うと、伝票を持ってレジへ行ってしまった。
「すみません。自分の分はちゃんと払います!」
「いいよ。その代わり、今度、お茶をしよう?」
鈴さんはそう言って、笑った。
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