第15話 謝罪

誤解が解けてルンルンだった私は、一人、校門を出た。

いつもと違うことに気がついたのは、最寄り駅についてからだった。

・・・・帰り、一人で帰ってこれた。

そのことは、私にとって嬉しいことのはずだった。

私は池谷くんの事が好きな訳では無いし、池谷くんも私の事が好きなわけじゃない。私が一緒にいるのは痴漢から助けてもらったお礼。少ししたら、この関係もおしまい。

よくわからない感情を無視して家に帰ろうと歩き出したが、すぐに進めなくなってしまった。

理由がわからず、それでも、私は帰ることができなかった。


「な、なんでここに?」

池谷くんが駅に来たのは私が駅に到着してから一時間が経った後だった。

「・・・・心配だった、から?」

「別に、彼氏でもない人の心配なんて、しなくていいのに」

「そう?それなら、わざわざ私を痴漢から助ける理由もないでしょう?」

私は助けてもらった。自己満と言っていたけど、そうだとしても、私に頼まれてもいないのに助けてくれた。

「・・・・ごめん」

池谷くんにはよく謝られるなと思った。

「謝らないで?そうね、貴方流に言うなら自己満、かしら?だから・・・・」

「そうじゃなくて!」

「?」

「あの日、急に抱きついてごめん」

一瞬、何の話をしているのかわからなかったが、抱きつかれた日は、私達が始めて出会った日だけだ。

「な、何、急に。別にその事はもう大丈夫だって」

「僕、もう、一緒にいないほうがいいかも」

「え?」

池谷くんがそういった時には、私の前からいなくなったていた。家の方へ向かう道路には走る池谷くんの姿があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る