第11話 信じてもらいたい By 池谷

「なんで信じれないんだ?名前も住所も教えた。それなのに、どうしてまだ、信じようとしてくれないんだ?」

これほど教えているのにも関わらず、彼女は全く気がついてくれない。そのことに、流石に耐えられなかった。

「・・・・無理、だよ」

「はぁ?」

「私のことなんて、好きじゃない・・・・」

黙って聞いていることが出来なかった。

僕の想いは全く伝わっていない、そう思った。

「信じれないなら、信じさせてあげる」

耳元で囁いた。

「だから、間違っても、今回みたいに僕以外の男に君を触れさせないで。もう、僕から離れないで」

これは、ただの僕の独占欲だ。今日、彼女が痴漢されているのを見た瞬間に僕の中に降って湧いた感情だった。

「・・・・」

「ご、ごめん。怖かった?」

何も言わない彼女に焦った。さっきまで痴漢されていたのだ。怖かったかもしれない。

「・・・・今日のお礼で、さっきのお願い、一週間だけ聞いてあげることにします」

「え?」

「今日はありがとうございました」

・・・・まだ、伝わっていないらしい。

本当に、彼女には困らせられる。

信じてもらいたかった。

僕は君がずっと好きで、君のことを想像しては頑張れて、けれど僕の知らない所で彼氏でもできているのではないかと想うと嫌な気分になった。

だから、頑張って勉強してここに来た。


大丈夫。

たった一週間だけど、時間はある。

だから、その間になんとしてでも彼女を自分に振り向かせてみせる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る