第10話 彼、ではない

「う、嘘だよね?」

「どうして?」

「ほ、ほら、友達の住所を教えてもバレなければ問題にならないし・・・・」

「なんで?」

「え?」

「なんで信じれないんだ?名前も住所も教えた。それなのに、どうしてまだ、信じようとしてくれないんだ?」

信じれるなら信じたい。これは私の初恋の人で、その人が私に会うために私のいる学校にわざわざ入学してくれた。そう、信じたい。

「・・・・無理、だよ」

「はぁ?」

「私のことなんて、好きじゃない・・・・」

そう言い切ることは出来なかった。抱きしめられていたからだ。

「信じれないなら、信じさせてあげる」

耳元で囁かれた。

「だから、間違っても、今回みたいに僕以外の男に君を触れさせないで。もう、僕から離れないで」

えっと、結局、私の初恋の人なんだろうか?

以前よりも、私の初恋の人ではないと思った。

彼は絶対、こんな事を私には言わない。

「・・・・」

「ご、ごめん。怖かった?」

「・・・・今日のお礼で、さっきのお願い、一週間だけ聞いてあげることにします」

何故か、怖くなかった。だけど、この人のお願いを聞き流すことは出来なかった。

「え?」

「今日はありがとうございました」

私はそれだけ言うと、電車待ちの列に並んだ。

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