第7話 あの男子と優しい女の人

「痴漢されている人がいます!降ろして下さい!」

その言葉を聞いて周りの人は驚いたような表情を浮かべながらも、私やあの男子、更にはあの男子に手首を掴まれている男性が降りるスペースを作ってくれた。


私は満員電車を降りると、急に身体から力が抜けた。

「怖かったね〜!もう大丈夫だよ!お姉さんが隣に居てあげるから、安心して!」

力が抜けた私を支えてくれたのは、私服姿のキレイな女の人だった。

「私、ここで彼女のこと見ててあげるから、学生くんはその痴漢を連れて改札に行って、駅員さん呼んできて!」

「はい!ありがとうございます」

キレイな女の人はあの男子に指示を出した。


「ごめんなさい」

私は女の人に無意識のうちにそう言っていた。

「どうして謝るの?」

「だって、貴方の時間を奪ってしまっているから」

「え?」

「私のことは大丈夫なので、お仕事や学校に行って下さい」

私は素直に思っていることを伝えた。

力の抜けた私を支えてくれたことはありがたかった。だけど、私なんかの為にこの人の時間が消費されているのは辛かった。

「行かないわ」

だけど、女の人は私の隣を離れなかった。

「ど、どうして・・・・」

「私は私が決めて今、貴方の隣りにいるのよ?それに、学生服着てる可愛い女の子が辛そうにしていて、離れるなんて、私にはできないわ」


その言葉に、何故か私の緊張の糸は緩んだ。

それと同時に、私の目からは涙が溢れた。

女の人は泣いている私の背中を優しく撫でてくれた。

「大丈夫だよ〜、怖かったね〜」

なんて言葉をずっとかけ続けながら。

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