第7話 あの男子と優しい女の人
「痴漢されている人がいます!降ろして下さい!」
その言葉を聞いて周りの人は驚いたような表情を浮かべながらも、私やあの男子、更にはあの男子に手首を掴まれている男性が降りるスペースを作ってくれた。
私は満員電車を降りると、急に身体から力が抜けた。
「怖かったね〜!もう大丈夫だよ!お姉さんが隣に居てあげるから、安心して!」
力が抜けた私を支えてくれたのは、私服姿のキレイな女の人だった。
「私、ここで彼女のこと見ててあげるから、学生くんはその痴漢を連れて改札に行って、駅員さん呼んできて!」
「はい!ありがとうございます」
キレイな女の人はあの男子に指示を出した。
「ごめんなさい」
私は女の人に無意識のうちにそう言っていた。
「どうして謝るの?」
「だって、貴方の時間を奪ってしまっているから」
「え?」
「私のことは大丈夫なので、お仕事や学校に行って下さい」
私は素直に思っていることを伝えた。
力の抜けた私を支えてくれたことはありがたかった。だけど、私なんかの為にこの人の時間が消費されているのは辛かった。
「行かないわ」
だけど、女の人は私の隣を離れなかった。
「ど、どうして・・・・」
「私は私が決めて今、貴方の隣りにいるのよ?それに、学生服着てる可愛い女の子が辛そうにしていて、離れるなんて、私にはできないわ」
その言葉に、何故か私の緊張の糸は緩んだ。
それと同時に、私の目からは涙が溢れた。
女の人は泣いている私の背中を優しく撫でてくれた。
「大丈夫だよ〜、怖かったね〜」
なんて言葉をずっとかけ続けながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます