第4話 私の初恋の人・・・・な訳ない

「覚えててくれた?」

被疑者は、私の初恋の人・・・・。


そんな訳ない。

私は一瞬で否定した。

「えーっと、知り合い?」

入学したての一年生同士の揉め事が、知り合いのただの喧嘩かもしれない。

そう思ったのだろう二人の先生は、私達に問題児を見る目で見つめて来た。

「う・・・・」

「いえ、知らない人です」

私は男子の言葉を遮ってそう言った。

「そう。つまり、池谷さんは、青山さんと貴方の親しい誰かを違えてしてしまったわけね」

「ま、間違う訳が無い!僕は・・・・」

「青山さん、池谷とは面識ない?」

「はい」

この男子の顔に見覚えもないし、名前も別にありふれたもの。きっと、同姓同名の他人だ。

それに、『彼』が私の事を『間違うはずがない』なんて、言わないだろうから。

「青山さんは、池谷のこと、どう思ってる?」

「人違いなので、怖い思いをしたといっても、こんなに謝られても困ります。それに、謝るべきは私ではなく間違ってしまった人だと思うので、もう大丈夫です」

間違えて別の女の子を抱きしめたなんて、彼女さん、きっと怒ってしまうだろうから。

「それなら、体育や学校行事など仕方がない場合を除き、二人の接触禁止としよう」

「先生、質問があります!」

「何?もう少し重たい処分を望むのか?」

「それは、同じ部活に入ったり、一緒に下校したりするのは駄目ということですか?」

その発言で、周りの空気が何度か下がったような気がした。

・・・・何言っているんだろう?

私はこの男子のことを知らないし、これ以上関わりたくない。偶然同じ部活に入ってしまうなんてことはあったとしても、一緒に下校するなんて絶対にありえない。

「だ、男女交際は校則で禁止していないから、駄目ではないが・・・・」

先生はそれしか言ってくれない。

「本当にすみませんでした!」

男子は私にもう一度謝った。

「ま、まあ、接触禁止は接触禁止だ。破ったら今度こそ反省文だから、気をつけるように!」

「はい!」

そういった男子は真剣そうな顔をしていたけれど、私を見ると笑顔で微笑んでいた。

その笑顔が怖くて怖くて、許さなければ良かったとすら思ってしまった。

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