襲撃
ルガン主導の元、セレータやアイリス。
その他の組織が行ってきた魔族陣営の苛烈な攻めによって確実に戦力が削れていった魔族陣営はとうとう少しでも被害を減らすべく一団となって行動するようになっていた。
みんなで集まって行動し、一つの大きな組織となることで単純な戦闘能力を高め、各個撃破されないようにするための行動である。
「ふぅー、来たか」
だが、この策にも弱点が存在する。
それは実に単純明快。
純粋な話であり、敵にいつでも位置がバレている以上全面衝突を回避しにくいというところにある。
「……」
そして、今。
その懸念の通り、魔族たちが集まっている街そのものへとルガン麾下の大量の兵士たちが迫ってきていた。
「とうとう来たぞ」
そんな人類側の兵士を眺める一人の魔族が小さな声でボヤく。
激しい戦いになることは間違いないだろう。
長年、人類の癌として世界に股をかけ、邪神復活のために暗躍し続けて来た魔族たちにとって、自分たちへとここまで広範囲な被害を出してきたのはルガンが初めてであった。
単純に数が減ったのはもちろん。
自分たちが半ば支配していた中小国そのものが滅びて影響力を失ったり、影響下にあった行路がなくなったことで商売に影響が出て資金が減ったり。
細々と作っていた幾つもの邪神崇拝の教会も完全に滅んでしまっている。
巧妙なヘイト稼ぎで邪神教は今すぐにでも倒すべき絶対悪となり、人助けを行っていた教会ですら叩きのめされているのである。
邪神復活の為に集めていた多くのものを喪失することになっているのである。
そんな事態を引き起こしたルガン。
それを意識しないなど魔族たちにはもう出来なかった……とはいえ、未だに魔族はすべての裏側にいるルガンの存在にまでたどり着いていないが。
「……我々の数世紀は必ずや、身を結ばねばならない。もうすぐなのだ……クソ。何故、かのようなときに世界を滅ぼす可能性もある選択肢を取るような怪物が現れるのだ。勝つ、他ない」
魔族は今、確実に追い詰められていた。
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