性別

 ノア。

 それはかつて、ルガンが孤児院で目をつけた生きのいい子供であり、将来性を見込んで冒険者になれるよう投資すると共に奴隷とした子である。


「むぅ……」


 そんなノアは見事、ルガンからの信頼に報いるような形で活躍していた。

 しっかりと冒険者として成功を収め、ソロ行動の子供という立場でありながらも冒険者のトップ層と同じだけの実力に合わせて驚異的な速度で実績を積み上げて続けていた。

 最初期にはルガンからのサポートが。

 そして、時折アレイスからの支援もあったノアではあるが、間違いなく今の圧倒的な実力と実績はノア本人の努力の証である。


「不潔……不潔ぅ、不潔……っ!」


 そんなノアは今、自身の主人であるルガンへの不満を口にしていた。


「ま、まぁ……そこまで荒れ狂わないで」


 そんなノアを前にするアレイスが落ち着くように声をかける。


「俺のような奴隷を作るだけでは飽き足らず、また適当なところで女を捕まえてきたのだろう?これを嘆かずにはなんていうのだっ!」


 そんなアレイスの言葉に対してノアは頭を抱える。


「お、俺は男だっ!」


 そんなノアの話の矛先にいる少女……ゼノは自分が男であると必死にアピールするために声を上げる。


「どこがっ!?俺よりも女の子らしいじゃないかっ」


「うぅ……」


「自分が男であると名乗るであればそれ相応の恰好をして見ればどうだっ!」


「うぅ……」


 今、ゼノが着ているのは一般的な町娘よりもちょっとだけ物がよさそうな女物の服を着ている状態である。

 ずっと動きやすい男とまったく同じようなファッションで動くノアとはまるで対照的であった。


「……わ、私も男だっていうのならしっかりと服装とかもそれ相応のにするべきだよね。昔の私はこんな服着ていなかったし」


 一人称まで女へと染まっているゼノの言葉に対して。


「俺は体も心もしっかりと女だってのぉっ!!!」


 彼女の前に立つノアは大きな声を上げる。

 ノア……ルガンがてっきり男だと思っていたその子はまごうことなき女の子であった。

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