敵の手
小さな子供たちが無残にも殺された。
その事実がアレイスに齎した影響と怒りの度合いは凄まじいものであった。
「……必ず、私が君の無念は解消してあげるから。だから、安心して眠っていてほしい。私には、これしか出来ないけど」
今のアレイスは魔族への敵意が信じられないほどに上がっていた。
彼女の敵意が高まってくれているのなら何よりである。何だかんだでアレイスはちゃんと強いからね。
同年代なら僕を除いてトップだと思う。
「……うぅ」
「大丈夫?」
それに対して、ゼノの方は少しばかりキツそうであった。
彼女としても初めてなのだろう。人の死を目の当たりにしたのは……しかも、それが幼き姉妹。
ゼノがトラウマとして抱えてしまってもおかしくない記憶である。
「……大丈夫。こんなところで、うじうじしている暇もないと思うから」
それでも、ゼノは気丈な立ち振る舞いを見せていた……顔色は青白いくせにね。
「そう、なら良かった」
主人公としての性根なのか、それとも何か別の要因によるものか。
少なくとも心の折れなそうなゼノを見て僕は満足げに頷く。
これなら主人公について心配することもないだろう……彼女はこの後、遊撃隊として色々なところを駆けまわってもらうつもりだかね。
「それじゃあ、二人とも気をつけてね?」
ゼノの様子に満足した僕はささっとこの茶番劇を終わらせてしまうことにする。
「……何が?」
「……?」
「もう魔族たちの手の中に入っているから」
「「……ッ!?」」
僕はアレイスとゼノの二人へと軽い口調で言葉を投げかける。
「ここは地下室全体が一つの大きな罠になっているんだ。相手に幻術を見せるような魔法が組み立てられていてね」
僕は魔力を溜めた両手を持ち上げ、そのまま勢いよく叩く。
「「……嘘」」
するとともに、自分たちの前に広がっていた光景は一瞬で様変わりしていく。
「まぁ、ぞくぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううううううッ!!!」
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
自分たちが進んでいた廊下は、自分たちの行動範囲を縛っていた壁が消滅し、ただ広い空間へと移り変わる。
この空間の中には幾つもの櫓が建っており、そこを中心として幾つもの魔族たちの
「はいっ!戦闘開始っ!」
何もないただ広い部屋の中で三人。
「攻撃開始ッ!!!」
「「「ハッ!」」」
多くの魔族たちに囲まれている状況にある僕が勝手に仕切って戦闘開始を宣言すると共に自分たちの方へと魔族が攻撃を仕掛けてくるのだった。
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