隠れ家

 既に壊滅状態にあるこの街。

 だが、この街の地下には大きな、大きなスペースがあるのである。


「お邪魔しまーす」

 

 建物の瓦礫に埋もれて功名にその姿を隠していた地下への入り口へと手をかけた僕はそのまま一切の躊躇なく地下へと入っていく。


「……ッ」


「……ふぅー」


 そんな僕の後を、アレイスとゼノに続いてくる。


「到着、っと」


 僕とアレイスにゼノは地上から地下の方へと降りるための梯子を下り終え、地下にある隠れ家へと足を踏み入れる。


「さぁ、進んでいこうか。気をつけてな?いつ、敵が来るかもわからないから」


「……わかっているわよ」


「了解です」


 僕はアレイスとゼノの二人を連れ立って薄暗く、ジメジメとした地下の隠れ家を進んでいく。

 地下をしばらく歩いていたところ、所在なさげにうろうろとしていた一組の幼い兄弟を発見する。


「……ッ!?ひ、人っ!?た、助けてっ!」


「ま、待ってっ!?お兄ちゃん!」


 僕たちは彼に気付いた頃、同じように向こうもこちらの存在に気付いて大きな声を上げながらこちらの方へと近づいてこようとする。


「ま、迷子かな?よ、良かった……っ!生存者が!」


 自分たちの方に駆け寄ってくる子供たち。

 そんな子供たちへとアレイスが近寄っていく。


「駄目だよっ」


 そんな中で、僕は前を進むアレイスが子供たちへと近づかないように、その手を掴んで強引に止めた───そんなタイミングで。


「……あっ」


 爆発する。

 先ほどまで、助けを求めていた無垢なる子供たちはただの肉片と成り果て、その血は僕たち三人へとべったりこびりついた。


「えっ……?」


「……ッ!?おえっ!?」


 突然の事態。

 それに対して、アレイスは呆然と声を漏らし、ゼノは相貌を青白く染めながら口元を両手で押さえてえずく……うん、吐かなかったみたい。

 偉い子だね、ゼノは。


「魔族が仕掛けた罠だ。何も知らぬ餓鬼を使ったな。避けられないようにするため、わざわざ相手が近づくことも含めての爆破にしたな。絶対に殺すという強い意思を感じる。僕が止めていなかったらアレイスも同じ目にあっていただろうね」


 僕はまずは自分の体を綺麗にし、その次にゼノの体を綺麗にしながら。

 ただ唯一、飛び散らず僅かに残った比較的に大きな血肉と骨のを抱え込むようにして蹲っているアレイスへと何が起きたのかを説明する。


「あぁァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 それに対して、僕の声をも聞こえていない様子のアレイスが憤怒の叫び声を響かせるのだった。

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