糾弾
「儲け、儲け」
僕の思惑通りに始まってくれた戦争。
オーハン王国とセルタ小国で勃発した争いより、複雑に絡み合った各国の利害関係によって多くの中小国を巻き込んだ泥沼の戦いへと変貌していた。
未だ大国は動いていないが……もうすでに何処が動いてもおかしくないような状況である。
「ふふっ……」
そんな状況において、僕はかなりの金額を稼いでいた。
「ふっはっはっはっは!」
もう高笑いが止まらない。
戦争が始まることが端からわかっていた僕は剣奴を集めて傭兵組織に変え、様々なところに売り捌いたり、他に多くの武具の売買を行ったり、様々な手法でお金を稼いでいた。
「まぁ、こんなにお金を稼いだところで意味はないけど」
どれだけお金を稼いだとしてもあまりに僕には意味ない。
これらの行為はただのついでである。
その目的は魔族の壊滅にあるので。
「えっとぉ……セレータからの報告はぁー、っと」
僕が調査を任せ、定期連絡を寄越すように命じているセレータから送られてくる報告に目を通そうと、自分の執務室の机へと乱雑に置かれている書類の中から彼女の物を探していく。
「ふんふんふーん」
僕が気分よくセレータの報告書を探していた中。
「貴方ねっ!世界を戦争の方向に仕向けたのはっ!」
自分の執務室へと勢いよくアレイスが入ってくる。
これまで、剣奴の街で慈善事業を必死に展開していた、久しぶりの彼女である。
「何かね?」
僕は彼女を前に、足を組みながら相対する。
「……何かね?じゃないわよっ!オーハン王国皇太子殿下の暗殺!それに関わっているでしょうっ!?」
「失敬な。僕はそんな命令など下していないよ」
「嘘をつきなさいっ!一連の流れの背後に貴方がいたことは既に割れているのよ!事件が起こる前!下手人と貴方は会っていたわね!」
「いやいや、そこに金銭的なやり取りも何かの裏契約があったりもしていないとも。神に誓ってもいい。まさか、僕としてもあの子があんな大事件を起こすなんて想定外だったんだよ?いやぁー、怖いねぇ。世界ってのは」
僕は激昂するアレイスを前にして、肩をすくめながら軽い口調で返すのだった。
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