悩みの種
動き出したルガンのプロジェクト。
それを起点として、絶妙なバランスを保ちながら一切の戦争なく一時の平和を享受していた世界は急速に戦争の足音を聞くようになってしまった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……一体、誰じゃ。ここまで我が国への強制力を発揮しているのは」
そんな中で、パトーク王国の頂に立つフォンターネ家。
この中でも頂点に君臨する当主にしてパトーク王国の国王である男は頭を抱えてしまっていた。
「なんで他国が急に我が国へと同盟の締結を求めてくるのじゃ。それも向こうから好条件で。明らかに我が国の名を騙るものが裏で動いておる。じゃが、それが何者なのかもイマイチ状況を掴めぬのじゃ……面倒なこと、この上ないのじゃ」
国王は頭を抱える。
だが、出来るのはそこまでである。
「貴族権を削るわけにもいかないしのぅ」
フォンクーネ家などはあくまで、パトーク王国の中で最も力を持っている一族という立ち位置でしかない。
この世界ではまだ、絶対王政の息吹は来ていない。
王政ではなく、貴族制と言えよう。
だからこそ、国王もそこまでの強権を振るえるわけではないのだ。
「大規模調査に乗り出せぬ。我が国の危機でもないし……何とも嫌らしい相手じゃ。このまま突き進んでいったら戦争に突き当たるのじゃ。一体、何が目的だと言うのじゃ」
どういうからくりなのか。
もはや神の力を借りたと言われる方が信じられるほどにスムーズな形で、誰かの意思とそれに動かせる裏取引によって急速に変わりゆく国々のパワーバランス。
そして、吟遊詩人の間ではやり出した民族的な歌によって各国間の民衆においてもどんどん過激派が増えて行っている。
大国ならまだしも、中小国で戦争が起きてもおかしくない状況にある。
「……一番、あり得そうなのはカエサル家か。アレイスとルガン君の婚約を何とか進められるように。どうにか、我が国において我が家が圧倒的な力を持てると言うのじゃがぁ」
そんな中でも、しっかりと国王は本筋を見抜いて今できる最善手を取るために動きだすのだった。
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