唖然
応接室にやってきてまずやること。
「えっ……?」
それは天使と女神によるゼノへの諸事情に関する説明であった。
「ど、どういうことで、えっ?えっ……」
『実はね……貴方には秘められた特別な才能があって』
「ふわぁ」
僕はそんな説明の間、自分で紅茶を淹れて楽しんでいく。クッキーとか何処に置いていたっけ。
ヤバいな、この洋館あまり使っていないからもうどこに何を置いたのか忘れた。
「ふんふんふーん」
それでも、応接室には色々なものを置いているはずなんだよなぁ。
「おっ、あった」
「クッキーですか?私も貰っていいですか?」
「ん?別にいいよ。ただし、自分の分の紅茶は自分で淹れろよ」
「ふふんっ!これでも私は紅茶を淹れることには自信があるのよ!……さてはて、人間界の紅茶の味は」
僕の言葉に対して、天使は慣れた手付きで紅茶を淹れ、そのまま飲み始める。
「あら、随分と良い茶葉を使っているのね。私たちの紅茶と比べると……比べると……本当に美味しいわねっ!?こんなの、こんなの、天界にある茶葉がまるで雑草!?」
「遅くね?」
というか、人間界と天界と茶葉にそこまでの差は出ないだろ。
どれだけ天界の茶葉酷いんだ……それとも、この天使は落ちこぼれであるがゆえに周りから雑草を茶葉として渡されているのだろうか?
まぁ、おそらくは後者だろうな。
「んー、クッキーも美味しいですぅ」
「それなら良かった。好きに食べていいぞ」
「本当ですか!?ありがとうございますっ!」
「別にいっぱいあるからな。たんとお食べ」
「わーい」
ただ周りよりも能力が低い。
これだけで陰湿な嫌がらせを受けているなんて普通に可哀想……少しくらいは優しくしてやってもいいだろう。
僕は天使と雑談しながらティータイムを楽しんでいく。
『ノア様はともかくとして……天使まで何をやっているのですか?』
そんな中で。
「はひっ!?」
ゼノへの説明を行い、ようやくになってその説明を終わらせた女神が天使へと苦言を呈する。
そして、そのまま軽いお説教タイムに入っていく。
まぁ、上司が説明している隣で楽しいティータイムを繰り広げているのは普通に考えて駄目だよね。
「……俺が、特別で、邪神への……?俺のTSは世界レベルの陰謀???」
そんな二人の傍らでは、すべての事情を聴き終えて唖然としているゼノが現実を拒絶するかのように戯言を繰り返している。
「んー、カオス」
そんな状況に僕は苦笑を浮かべながら紅茶をすすり、クッキーの方に手を伸ばすのだった。
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