天使
結局、最後まで二人でお風呂に入った僕とゼノはしっかりと温まってから身体を拭いて着替えていた。
彼女が今、着ている服は僕が持っている中でも最も安価な服だ。
「こ、こんな服を俺がぁ……!?」
それでも、ゼノにとっては遥かに素晴らしい服のようであるが。
「それしかないのでな、許してくれ」
「いや、むしろ俺がこんな服を着ることを許して欲しいというか、なんというか……」
「まぁ、細かなことはいいだろう」
「こ、細かなこと……」
「ささっと戻らないとな。あの異常者を待たせているだろうし」
「……ッ!?あ、あの人か」
僕が天使の名前を出すと共にゼノは恐怖に表情を引き攣らせ、体を強ばらせる。
彼女の中ですっかりヤバい奴認定されてしまったようである。
「あっ!やっと出てきましたわ!」
そんなゼノを連れて浴場を出れば、まずそこに天使が待ち構えていた。
「こんなところで待っているな。応接室の方に行くぞ。あそこが一番丁度いい」
「あっ、はい」
「行くぞ、ゼノ」
「う、うん……」
僕は天使とゼノ、その二人を連れて応接室へと向かっていく。
「それで?天使の方は女神と方針は決められた?」
その道中から、僕は早速話を始めて行く。
「……一応、私たちがどう動くかの方針はある程度決まっているんです。邪神の復活を阻止するのが我々の考えであり、邪神を弱体化させることに成功して、なおかつ討伐出来る可能性が高いと判断できれば討伐も視野に入れると言うのが我々の考えなのです。ただ」
「ただ?」
「……邪神の討伐ははっきりに言って無理ゲーです。曲がりなりにも神であるわけですから。我々天使でも話になりませんし……我ら天使を大幅に上回ることもあるごく一部の限られた人類であっても、遠い話でしょう。ゆえに、邪神の封印を維持するほかない……それが、天界の総意なのです」
「僕は嫌だぞ」
「……そこを、どうか!とお願いするほかないというのが我々の立場になっておりまして」
「僕は嫌だぞ」
「……ま、まずはこう色々と条件の方を整えていってですね?そ、そこからと言いますか」
「僕は働きたくない」
「……ですが、そのねぇ。我々天使としては……」」
「働いたら負けかなって思っている」
「誰に負けているんですが!それっ!」
会話の内容は終わりなきループで進んでいく。両者引かぬ押し問答である。
「あ、あれ……?本物の天使ではなく、偽物、なんだよね?」
そんな中で、僕と天使の会話を側で聞いていたゼノは困惑の声を上げているのだった。
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