お風呂
何もない森にポツンと建てられた森の洋館。
「ひ、広い……」
その施設の一つである大浴場へとやってきたゼノはその広さに驚きの声を漏らす。
「まぁ、一応僕は貴族であるわけだしな。そんなことよりほれ、さっさと体を洗うぞ」
僕は体にタオルを巻いているゼノの背中を押して先へ先へと進ませる。
ちなみに浴場のスタイルは現代の地球と同じだ。僕が魔道具などを駆使して、日本とまったく同じ様式の浴場をわざわざ作らせた。
日本人としてはやはり入浴にだけはしっかりと拘りたいからな。
「ど、どう使う……だ?」
「僕の見てろ」
シャワーを前にして何をすればよいのかわからず困惑しているゼノを横目に自分の頭を洗っていく。
「……うわっ!?水が出たっ!?」
「ふんふんふーん」
「えっ、えっとぉ……」
「……洗い方が雑っ!」
自分の頭を洗い、泡を流し終えた僕は、ほとんど洗えてもいないのに満足して頭のシャンプーを
「えっ!?だ、ダメなの?!」
「そんな洗い方じゃダメに決まっているだろっ!お前は座っとけ。僕が洗う」
「……えっ?あっ、うん」
僕は手でシャンプーを軽く泡立た後、素直に座っているゼノの頭へと触れて頭を洗い始める。
「目を瞑っていろよ。目に入ったら痛いからな」
「は、はい!」
「……っ」
油と汚れで洗いにくいゼノの頭を力強くごしごしと洗っていく。
「んっ……ぁ、んっ」
「よし、おっけぇー。そのまま流していくぞ」
「う、うん……」
僕はシャワーで泡を洗い流していく。
「流石に顔と体は自分で洗えよ」
ゼノのシャンプーが終わると共に僕は再び自分の席につき、自分の続きを進めていく。
「う、うん……」
僕の見様見真似で、自分の体を覆っているタオルを前に邪魔そうにしながらも何とかその体を洗っていく……まぁ、及第点だな。
「終わったな?」
「う、うん……終わったよ!」
ビショビショのタオルで何とか全身を隠しているゼノは僕の言葉に頷く。
「それじゃあ、浴槽の方に入るぞ。風邪ひくわけにもいかないしな」
「う、うん!へ、へへ!俺ってば浴槽なんて初めて入るぞ!何か、貴族にでもなった気分だ」
「まぁ、実際に貴族である僕と同じことをしているわけだからな。その気分はあながち間違いでもないぞ」
「お、おぉ!」
「あっ、お湯にお前の汚いタオルをつけるなよ?湯が汚れる」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええ!?」
僕は自分の腰に軽く巻いていたタオルを外すと共に湯の張った浴槽へと足をつけるのだった。
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