邂逅
本気で女体化していやがる。
僕は自分の目の前にいる主人公を前に表情を引き攣らせる。金髪碧眼で王道派のイケメンであった主人公は今。
その金髪が腰の長さにまで伸び、その瞳は何処か光を失った白いものに変わってしまっている。
体つきも男のものから女に寄っているし、まだ小さな少女だというのに、胸に関しても同年代と比べるとかなり発育よく大きくなっている……このまま、成長が止まればギリギリ男物の鎧も入るかのしれないが、今よりも大きく成長していくのなら絶望的だな。
「いや、僕は神様じゃないよ」
目の前の主人公の状況に頭が痛くなりつつも、僕はそれでも内心の動揺を抑えて彼、女へと声をかける。
「そ、そうなの……?」
「うん」
「そ、それじゃあ……後ろにいるのは?」
「……ぁ」
主人公が指を刺した先。
そこにいるのは真っ白な羽を広げる天使……勝手についてきた邪魔者である。
確かに見た目だけ間違いない天使がいるのはあまりにもややこしいな。
あと、ちょうどあれだけ強かった嵐が晴れ始めたせいでまるで後光のように僕へと太陽の光が差し込んでいるのも問題。
主人公が勘違いしてしまってもしょうがないだろう。
「……ッ、あれは偽物だよ。頭痛い人だから、あぁして天使みたいなことをしているのだよ」
僕は表情を更に引き攣らせながらも言葉を続け、アレが何なのかを説明していく。
正しい説明をするのも面倒だ……僕が神と間違われるのはやりにくい。女神の役割の代わりを僕がやるのは御免である。
「だ、誰が頭のおかしい人ですかっ!?私は正真正銘の天使ですよ!」
僕の言葉に対して、天使は驚愕の表情を浮かべながら不満の声を上げる。
「ほら、見て?異常者だ。自分のことが天使だと信じて疑ず、言動までしっかりと染まってしまっている。もう末期患者だね」
「誰が異常者ですかっ!?こんなかわいい天使を捕まえてっ!」
更に反発する天使。
「……こ、こわっ」
それを受け、主人公は普通に恐怖へと引き攣った表情を浮かべて自分の元に避難してくる。
「が、がーん」
そんな主人公の態度に天使は目に見える形でショックを受けたような表情を浮かべながら崩れ落ちていく。
「まぁ、異常者は置いていこう。僕の名前はルガン。君は?」
僕は天使から視線を外し、改めて主人公の方に視線を向けて自分の生を告げる。
「わ、私はゼノ。よ、よろしくお願いしま、す?」
「うん、よろしく」
実に不本意ながら。
僕は思わぬ形でゲームの主人公との邂逅を果たすのだった。
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