天啓

 この場に突如として響き渡ってきた声。

 それはまさしく、ゲームにも出てきた上位存在、女神の声であった。


「……ひぇぇ!?め、女神様!?」


 僕の横でひっくり返りながら驚愕の声を上げている天使を横目にゆっくりと口を開く。


「自分に、何の用でしょうか?」


 大した本体スペックを持っていなかった天使とは違い、しっかりと女神はぶっ壊れ存在。まさに神という名にふさわしい性能をしている。

 ここで、あまり逆らいたい存在ではない。


『しっかりと自身よりも格上であると判断した相手に対しては、遜るその態度は嫌いじゃないですよ。ルガン様』


 めっちゃくちゃ煽ってくるやんけ。

 敬語と敬称外せよ、もう。


「それで?本当に何の用ですか?自分としては今すぐにでも自分の隣で倒れている不良品を返品したいのですが」


「不良品っ!?」


「それともあれですか?これは僕へのプレゼントってことで良いですか?このままこいつの羽を鶏ガラにしてしまっても?」


「鶏ガラっ!?」


 僕の言葉を聞く天使の瞳へと徐々に涙が溜まっていく中。


『まぁ……そこにいる天使が落ちこぼれであることは認めましょう』


「はぅぅぅぅぅぅ」


 しっかりと女神さまが止めを刺していった。


『まず、最初にこちらの誠意の表れとして情報を開示しておきましょう』


「それは、それはありがたいですね」


『我々は貴方が何者であるかはわかりません。ただ、この世界に現れた特異点。何故か、何処とも知らぬ前世の記憶を持った存在として認識しております』


 嘘っぱちであるとして受け取って置こうか……神なんていう存在があのゲームのままとは思えないからな。


「こちらは明かしませんよ?」


『……えぇ、もちろん構いませんとも』


 僕の言葉に女神は実に穏やかな声色で同意を示す。


「それで?何故に前世の知識を持つのか、どんな前世を歩んできたのかを知らない存在を相手に女神さまはわざわざ何の用ですか?」


『簡単ですよ。貴方にこの世界のために戦ってほしいのです』


「……もう少し、良い人間がいるのでは?僕のような正義感の薄い人間ではなく、もっと正義感の強い人が」


 例えば主人公とか、主人公とか、主人公とか。


『まぁ、貴方を知識の権化としましょう。それで言いにくいのですが、私が目にかけていたとある正義漢は一つの罠にかかって女になりました。男用に用意していた私の準備がご破算です。よりもよって巨乳になりました。もう鎧は絶対に入りません』


「はぁ?」


 僕は若干ブチ切れている女神の言葉に疑問の声を浮かべるのだった。

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