天使
「ちょ、ちょ、どういうことですかっ!?」
僕の前に突然現れ、勝手にこちらを主人公扱いしてくる天使さま。
「わ、私はなんで今、門前払いされそうになっているんですかぁ!?」
「良いから、帰れや」
何としてでも喚き続ける天使に対して、僕はさっさと展開に帰るよう促していく。
「ど、どう……どうなっているんですか?も、もう私には何もわかりません」
それに対して、天使は困惑した表情と共に頭を抱えている。
「なんでお前がついていけていないんだよ。一番俯瞰で知っているはずだろうが」
それを見て僕はため息交じりに言葉を漏らす。
何か、思惑があって主人公から僕にターゲットを変えたのだと思ったのだが……そもそも、この天使には本来あるべき主人公の存在すら知らされていないのか?」
「クソ迷惑なんだが」
「ふぇぇぇぇえ」
「ちっ」
「ふぇぇ。何もわからないですよぉ。私は善良で強い勇者の方と旅に出るはずだったのに……なんなこ、こんな悪そうな人がぁ?」
「僕のような美少年を捕まえて何を言うか」
「び、美少年はこんな悪そうな言葉遣いも、威圧感も出しません!ショタは可愛いんです!」
「言うだろ。つか、お前絶妙に気持ち悪いな」
「うわぁぁぁぁぁん!ショタに気持ち悪いって言われたぁ!」
僕の言葉を受け、ふよふよと微妙に浮いていた天使は崩れ落ちて泣き始める……作中で、この天使があくまでお助けキャラで主人公の攻略対象にならなかった理由はもしかして単純にこいつがショタコンだからなのか?
「はぁー、どうしろと?」
僕は泣き崩れている天使を前にしながら深々とため息を吐く。
「まぁ、どうでもいいか」
どうするべきか、わずかばかり悩んだ僕であるが、そもそもとしてこんな天使なんて僕にとって酷くどうでもいい。
放置しておけばいいだろう。
「ふんふんふーん」
僕は天使から視線を外し、こたつの上にあるみかんの方に手を伸ばす。
「と、とうとう無視された……?」
どうせ、天使は依り代もなしに地上へと居続けることはできない。このまま放置しておけば勝手に消えてくれるだろう。
『少々、私どもの話を聞いてはくれませんか?ルガン様』
そんなことを考えながら僕がみかんを口に運んだその瞬間。
「「……ッ!?」」
この場に一つの厳かな声が響く。
「なんっ、なんっ!?」
「め、女神様ァァァァァァアアアアアアアアア!?」
そして、そのままこの場へと響いた声、その声の主の存在が誰かを僕も天使もすぐに察し、動揺の声を上げるのだった。
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