第三章

急成長

 剣奴たちが起こした反乱のおかげで貯金箱を手にした僕はなんやかんやで自分の領地の方へと戻ってきていた。

 あの街は完全にセレータへと丸投げである。


「ふぃー、あれもあれで楽しかったけど、やっぱりこたつなんすわ」


 あそこで遊んでいた時間を考えてもまだ季節は冬。

 僕は自分の部屋でこたつにぬくぬく入ってゆっくりしていた。


「……おぬっ?」


 僕がこたつでゴロゴロしながらみかんを食べるかどうか、難しい選択に悩んでいたところ。

 部屋の窓が叩かれる。

 叩いた相手は鳥である。


「もう報告?」


 僕は窓の外にいる鳥の足に結ばれている書類だけを自分の元へと転移させ、鳥には元の場所へと戻るように遠距離から指示する。


「仕方ない……手を出すとしよう。いや、まだだな」


 僕はこたつから手を出すこともなく魔法で送られてきた書類を広げていく。


「あー、案外良さげそうだね」


 書類に目を通していく僕は率直な感想を口から漏らす。

 ここに書かれているのは剣奴たちが反乱を起こした結果、僕のものとなった街の発展状況である。

 書類越しに送られてくるセレータの感想を見るに今のところはかなり順調に発展出来ているようである。

 経済成長率も順調、剣奴たちを利用することによる警察組織強化による治安回復、貧困率並びに失業率もアレイスが一人で何とかしようと努力したおかげでマシになっているようである。

 順調な成長……どころか、飛躍的な急成長を遂げているらしい。

 

「問題は薬物が出回っていることくらいか……うーん。外国勢力も入っているのかぁ。こうなったらセレータたちの一派じゃ完全に締め出すのは難しいよね」


 ただ、ひそかに薬も出回っているようで、そこが問題になっているようだ。


「おーん」


 外国から来る麻薬の対処は厄介である。

 そう簡単にこちらが手出しできない一団と共に運び込まれていることもあるし、そもそも国が統率出来ないほどの巨大な犯罪組織による犯行であることが多い。

 これを対処するにはセレータたちだけでは明らかに役不足。外交も絡む複雑な対処が必要。

 麻薬撲滅なんてあのアメリカさえも出来なかった難題……。


「まぁ、いいや。面倒」


 あの街は既にセレータたちに任せたのだ。

 定期的に僕のお小遣いとしてあの街からお金が入ってくれば十分。たとえ、街中に薬物ジャンキーが転がっていてもアメリカのように経済は生きていける。


「放置で良いや。みかん食べよ」


 ささっと書類をこたつの上から退けた僕は手を布団から出して、みかんの方に伸ばすのであった。

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