騒動

 僕の告げた他国の人間と裏取引をしていた証拠に関する事柄。

 これについて誰よりも強く反応したのは僕でも、オストワ伯爵家の当主でもなく、アイレスであった。


「一体、どういうことなのかしら!?他国との裏取引なんて決して認められるものでは無いわ!」


 半ば強制的にセッティングされた停戦協定の場において集まる僕と、オストワ伯爵家当主と、アレイスの三名。

 そんな中でひたすらオストワ伯爵家当主はアレイスから詰められていた。

 もはや僕はそっちのけである。


「いや、この件に関しては……」


 そんなアレイスに対して、オストワ伯爵家はもうタジタジである。

 それもそうだろう。

 今回、僕が出した話は完全に違法であるのだから。

 ただし、裏取引の内容に関しては奴隷売買や剣奴たちが戦うコロシアムにおける賭け金などなど、黒い噂の絶えないこの街の運営において半ば仕方ないとも言えるものである。

 王家も半ば黙認してきた事柄だ。


「何よ!?」


 だが、相手は未だ子供のアレイス。増してや正義感の強いあの子である。

 高度な政治的な判断など求められるものでもないだろう。


「……ッ」


 自分へと問い詰めてくるアレイスへと苦々しいものを見るような視線を向けるオストワ伯爵家の当主は苦渋の表情を浮かべている。


「どうです?オストワ伯爵家当主」


 そんな中で僕は口を開く。


「あの街の領主として僕を抱くのは」


「むっ……」


 僕の言葉にオストワ伯爵家の当主が何とも言えない反応を見せる……うーん、これは行けるな。


「そんなに難しい話ではありませんよ」


 僕は笑顔でオストワ伯爵家当主へと言葉を畳み掛けていく。


「ただ、色々と問題があったのは事実でしょう。そもそも反乱を起こされたこと自体が問題ですから。今回の裏取引の前に、ね?」


「……確かに、そうかもしれませんね」


「いやはや、この裏取引に関しては間違いであると私も確信しているのですが、念のためです。政治は楽しいですよね?」


 僕はあまりにも露骨すぎるアピールをしながらオストワ伯爵家当主に言葉を話していく。


「……そういうことでしたら、確かに、お任せしましょう」


「えぇ、承知いたしました。私がカエサル辺境伯を継ぐ年くらいには返しましょう。飛び地をもっていてもあれですから」


「えぇ」


「それでは内乱に関しても、取りやめということで」


「えぇ、我々も反乱鎮圧部隊を引きますので」


 僕とオストワ伯爵家当主は実に手早くやり取りを終わらせる。


「えっ?なんか終わった?」


 最後にそっちのけされたのは随分と活躍してくれたアレイスである。

 お前を僕が連れてきた理由をしっかりと果たしてくれた。もういい、戻れ。

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