衝突
やはり、というかなんというか。
僕の挑発は中々に不味かったらしい……いや、何も僕やカエサル家にどうこうするわけではない。
ただ、プライドを刺激されたオストワ伯爵家の当主は全力を出すようになってしまったのだ。
「まぁ、好都合だけどぉ」
性奴隷の女に持ってこさせたフルーツを手に屋敷の屋根の上に乗る僕は笑みを浮かべながら遠くを静かに見つめる。
魔法によって強化される僕の視界は確かに戦場の様子を克明に認識していた。
「ふんふんふーん」
僕は鼻歌を歌いながら戦場の様子を眺める。
「リアルな戦場というのはこんな感じなのかねぇ、映画以上の迫力だ」
剣奴たちがオストワ伯爵家の当主が率いる兵隊を相手にその力を振るい、圧倒的な力を見せている様子を眺めながら感想を漏らす。
「おぉー、存外やるぅー」
戦況としては剣奴たち有利。
己の命を懸けて戦う士気が最高潮の剣奴たちは非常に強く、僕が売りつけた数々の魔道具はしっかりと機能していた。
「ルガン様」
「おっ?セレータか。ちゃんと、その職務は終えたな?」
セレータに任せた職務。
それはこの街における経済の支配並びに貿易路の確保。彼女たちが表舞台でも商会として動けるようにすることである。
この街は貴族が遊びに来れるような、行き来が楽な良立地にある。
商売における貿易路としても十二分に機能する場所だ。
「問題ないぜ、ちゃんと終わらせた」
「ならば良い……そろそろ、遊びも終わりかなぁ。なんか、割とちゃんと動いているなぁ、僕」
本当はただ少し見て、セレータの表舞台での活躍がしやすいような土台を作るのが目的であった。
それでも、いつの間にか僕は傾いていた街を発展させ、セレータ経由で大商会を作れる規模にまで話を盛り上げてしまった。
もはや、土台などという次元ではなくなっている。
「案外、僕は働くのが好きなのか……?って、まぁ、そんなことはどうでもいいか。僕にとって重要なのはそんなことじゃないしね」
僕は自分で自分が言った言葉を否定しながら立ち上がる。
「それじゃあ……そうだねぇ。きびきびお仕事して行こうかねぇ」
そして、僕は今回の一件を己にとって最も価値あるものにするようにするため、行動を開始するべく動き出す。
ふふふ……このまま、僕が一人勝ちさせてもらうとしよう。
「セレータ。君も頑張ってね?まだまだやりたいことは多いのだから」
「おう!私にお任せあれ、だ!」
己の言葉にセレータが頷いたのに満足した僕は屋根の方から降りるのだった。
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