お手伝い

「来たぞ、どけ」


 僕は剣奴の長を含め、多くの奴隷が集まっていた屋敷の大広間。

 奴隷たちが頭を抱えながら、ここから追い出した文官の代わりにやらなければならない


「ど、どうしてここに!?」


「貴様らが不甲斐ないからな……どれだけ溜めているのだ」


 奴隷が街を占拠したからと言って、自由にできるわけじゃない。

 一つの巨大な街を占拠し、それを維持しようと思えばやらなければならないことが多く、それを管理するのが書類作業。

 それは何であろうとも軽視することが出来ない。


「まずは商人だ、商人を呼び込むところからだ。ちゃんと帳簿も取っておけよ?出なければネコババし放題になる……字くらい綺麗に書け。これはもうやる必要ない。そこは違うだろ」


 僕は奴隷たちが行っている書類作業に対して、ダメ出しをしていきながらペンを持って勝手に介入してどんどんと進めていく。

 まずは重要な順に並び変えて、いらない仕事はさっさと捨てて。

 この場で作業していた奴隷たちを捨て置いてどんどんとやるべきことを一人で進めていく。

 そんな中で。


「……これが、貴族の能力なのか。俺たち、奴隷では……とても」


 一人の奴隷が僕の姿を見て弱音をぽつりと漏らす。


「ほざけ」


 僕はそんな言葉を一蹴する。


「お前、血を見たことがあるか?」


「えっ……?あ、そりゃ」


「ならば見るか?」


 僕は自分の腕を魔法で切り裂き、それによって噴き出した血を弱音を吐いた男の方にかける。


「貴族だろうか、奴隷だろうか血は赤い。元より、カエサル家の高祖に辿れば力で成り上がった奴隷へとたどり着く。貴族の血は尊いなどと、各方面で見聞されている事実だが、そんなものは虚構だ。全員同じ人だ。違いなどない」


「……んなっ」


「書類作業の経験がないお前らが、書類作業をしたことのある僕に敵うわけがないだろう。僕とお前の間にあるのは経験の差だ」


 クソジジイのせいでたまに書類作業も降られるのだ。前世でもそこら辺の作業はしたことあったから慣れたもの。

 戦ってばかりの剣奴と僕の実務能力が同じであるわけがない。


「手伝ってやるから傅け」


 最低限の手伝いレベルであれば怒られないだろう。

 堂々たる態度で『町の保全のため』とでも言っておけばいい。


「……先ほどと、言っていることが違う気がするのだけど」


「僕の趣味は他人を挑発することだ。お前を挑発するのに身分差がちょうどよかったから使っただけで、別に貴族とか奴隷とかまるで興味ない。くくく……身分差に怯える貴様の視線は実に僕の好みだったよ?」


「ず、ずいぶんな趣味のようで」


 僕の言葉を聞いた性奴隷の女は頬を引き攣らせながら口を開くのだった。

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