目的

「ほ、本当に何をしに来たんだ……?」


 剣奴による反乱が絶賛引き起こされているような街の中に単独で潜入してその長までも取り押さえた僕は今。

 剣奴の人間に持ってこさせたフルーツをパクついていた。

 そんな僕を見て困惑の声を漏らすのが自分の前にいる剣奴の反乱を主導する長である。


「前にも言っていただろう?観戦だよ」


 そんな剣奴の長の言葉に対して僕は軽い口調で答える。


「良いか?僕は貴族なのだ。国王陛下に傅き、忠誠を誓う貴族であるが、我らは自由。一つ一つの領地、貴族が独立して自分で考え、国難が時には一致団結する。此度の件は国難とはまだ呼べぬ。一度、自国の反乱分子が反乱して一つの街を占領したのみ。対処すべきはこの街を統べし貴族と貴族を支援する義務を負う王家のみ。僕は未だ、君たちを捕らえる必要がない」


 この世界はルイ14世など、国王が絶対的な力を持つ絶対王政というよりも地方の貴族が未だ力を持つ貴族制の世界。

 フランスに仕えているはずのアンジュー伯が何故かイングランドの王になるなどといった時代と似たようなものだ。

 ゆえに、僕は自由に動いても正式に罰せれることはない。


「……だから、味方すると?」


「流石にそこまで言ったら問題になるであろう。僕はただ見るだけだ」


 反乱軍に与して戦闘を始めたら流石に反乱分子扱いされて罰せられるけど。

 まぁ、でも見ているだけなら何のお咎めもない。


「な、何の為に?」


「暇つぶし。貴族の道楽だとも。命を懸け、己が今を変えんと欲す汝らが姿を見ることだとも」


「あ、悪趣味な……っ」


 僕の答えを再度聞いた剣奴の長は表情を引き攣らせながら


「そう邪険にするでない。僕はこれでもカエサル家の子でな?貴公の街、それを統べしオストワ伯爵家よりは立場が上。貴公らの要求を伝えるための橋渡しとしてこれ以上ないと思うが?」


「……それは」


「それに僕を受け入れるほかないぞ?お前は。力関係はどちらが上であったか?ここで、僕がお前らを全滅させてやっても良いのだぞ?圧倒的な力でねじ伏せられる弱者という図も中々に退屈せぬだろう」


「……ッ」


「ほれ、剣奴の長よ。それが嫌なら僕をもてなすのだな。もてなしているうちは何も言わん。部屋と食事を用意しろ。当然、僕が納得できるようなものだ。貴族に相応しき贅を差し出せ。ついでに言うと女もだ。慣れたものだろう?」


「……くっ」


 歯を食いしばり、悔しそうな表情を滲ませる剣奴の長。

 それに対して僕は偉そうな視線を崩さずに一方的な言葉を言い放つのだった。

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