剣奴

 僕が剣奴の反乱がおこった街から程近い大きな街にやってきた次の日。


「さて、剣奴の長よ。汝は何を欲す?」


 とあるところに遊びに来た僕は一人の男性に向かって声をかける。


「ふ、ふざけるなっ!?何様のつもりだ……ッ!」


 そんな僕の元へと、下の方から男性の声がやってくる。


「上からだよ?立場としても、恰好としてもね」


 そんな彼を文字通り尻に敷く僕は笑みを浮かべながら言葉を話す。


「な、何が上だ……お前を取り囲んでいる大勢が見えないのか?」


 男の言葉を受け、視線を少しだけ上に持ち上げた僕はそのまま周りをぐるりと一周させて確認。

 自分の周りにいるのは大勢の剣奴たち。

 完全に取り囲む形で僕の周りに立っている。


「この程度で僕をどうこうできるとでも?」


 周りを見終えた僕は悠長な態度を崩さずに口を開いて鼻で笑う。


「ど、どうこうだと!?これだけの人間がいて!我らに何も出来ぬとでも!?」


 それに対して男性は吠える。


「僕はここへと単騎で侵入し、今回の件を首謀する頂点であるお前をこうして捕まえたのだぞ?そんな人物を前にしてたったこれだけで行けると良く思ったな?」


 だが、そんな言葉には何の力もない。

 僕が今いるのは剣奴が反乱を起こして完全に占拠してしまったその街の中心地、そのもの。

 真っ直ぐに敵をぶち抜けてこの街の中心地である屋敷へと侵入、内部にいた反乱を起こした剣奴の長を用意に地面へと叩きつけて僕はそのまま尻に敷いたのだ。

 そんな僕を相手に少し手勢を集めて何とかなると思うし、


「……く、くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」


 僕の言葉に剣奴の長は声を上げる。


「何も、出来ずに……こんな、ところで終わるというのかよっ!!!お、俺は……まだ、何も。何もしていないというのに、こんな……いつものように、一方的な貴族の行為によって、また、惨めに……負けるのか」

 

 そして、彼が続けざまに口にするのは後悔の念である。


「何かを勘違いしてないかね?」


 絶望の表情を浮かべながら声を上げる剣奴の長に対して、僕はゆっくりと立ち上がりながら優しく声をかける。


「まぁ、安心したまえよ。別に僕はお前らを拘束するつもりはないのだ」


 そして、魔法で召喚した自分用の椅子へと腰掛けて足を組む僕はゆったりとした態度で口を開く。


「ちょっと観戦しようと思ってな?別に僕はお前らの邪魔をしない。とりあえずフルーツかないか、ないか?僕はお腹空いたよ」


 そのまま僕は横柄たる態度で自分の目的と些細な要求を告げるのだった。

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