移動

「うっわ、さっむ」


 剣奴の反乱。

 それは流石に見るしかないと思った僕は寒い中であってもわざわざ領地の方から剣奴が反乱を起こしたという街から程近いところにある大きな都市へとやってきていた。


「ねぇ、ちょっと流石に剣奴が反乱している様が見たいから外に出てきたってのはあまりにも人道に反する気がするのだけど」


「暇なんだよ」


 僕の生涯の目標は生まれたその瞬間に達成されてしまっている。

 そのため、実は結構暇なのだ……働くのが嫌すぎてそうならないようにするにはどうすればよいかばかりを考えていた弊害で肝心の働く必要がなくなった後。

 自分がどう生きているかを大して決めていなかったせいで困ってしまっているのだ。


「待って?それのどこか弁明になると思ったの?最低になっただけだよ?」


「……やはり貴族は、ゲスイのか」


「待って頂戴。これを私たちと同じにしないで頂戴。こいつはあまりにもイレギュラーよ」


「酷い言い草だ」


 僕は自分と共にやってきているアレイスとノアの二人の言い草に不満を垂れる。


「そんなことより寒い。何とかしてくれ」


 そんな中で、ノアは体を震わせながら

 今、僕たちは建物の中に入るでもなく冬の外に立っている。そのせいで中々に寒いのである。


「永続的に発動させる魔法の発動は面倒なんだよ。別に服で十分暖かいしこのままでいいよ」


「確かに私もそれでいいかも」


「……俺が死んじゃう」


「知るか」


 僕とアレイスは貴族として、もこもこで暖かな服を着ている。

 それに対して、ノアはスラムの餓鬼。当然、着ている服はお粗末なものであり、間違っても暖かそうなどと告げられるものではない。


「……確かに可哀想ね。暖を取れるくらいの熱の火魔法……私に出来るかしら?」


 僕がにべもなく断ったのに対して、アレイスはノアの為に何とか魔法で暖を取れないか四苦八苦し始める。

 暖を取るのにちょうどいいだけの温度の炎を用意するの、地味に大変なんよな。


「な、ならせめてどこか建物の中に……」

 

 どうやら、アレイスは失敗してしまったようだ。

 ノアは変わらず震えたまま、僕へと建物中に入ろうと提案する。


「断る……ここで人を待っているんだよ」


 僕はそんなノアの言葉を一瞬で却下すると共に、指パッチンをトリガーとして魔法を発動。

 少しの間、暖を取るのに十分な火をつける。


「あっ、ありがとう」


 永続的に発動させるように魔法を組むのは面倒だが、少しの間で良いのであれば大した面倒でもない。

 これくらいであれば別に良いだろう。ノアを黙らせる最も簡単な術だ。

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