こたつの魔力
「……何さ」
僕はこたつでぬくぬくと過ごしていたところにやってきたアイレスとノアの二人へと胡乱げな視線を向ける。
「貴方がダラダラ過ごしていると聞いて飛んできたわ。このまま何もしないでだんまり、ぬくぬく過ごすなんて許さないわよ?私の婚約者とでもいうべき相手が」
あれ?別に僕は婚約者になってなくね?
「俺もついでに来た。俺が一人でやるよりもお前を利用した方がさっさと金持ちになれそうだしな」
「……」
何を言っているのだ、こいつは……そんな面倒なこと、するわけがないだろうに。
「……君たち。外は寒かったろう。とりあえずこの中に入りなさい」
僕はそんなことを考えながら、一先ずこたつの布団を持ち上げて二人にこの中へと入ってくるように促す。
「何なの?そこは」
「暖かいよ?ほれ、ノアやい。銀貨一枚あるよ?」
「座る」
僕の言葉に即答したノアはすぐさま銀貨を回収しながらこたつの中へとその冷たい足を突っ込んでくる。
「じゃあ、私も入ろうわ」
それを見てアレイスもこたつの中へと入ってくる。
「「……っ」」
そして、こたつの中へと入った二人は驚愕の表情を浮かべる。
「良きだろう?」
僕は感動している二人に対いて自信満々に告げる。
「……確かにこれはいいかもしれないわね」
「うん、これは……いい。貴族はいつもこんなところでくつろいでいるのか」
このこたつがあるのは僕の家だけだけどな。
「私は出た方がよろしいでしょうか?」
こたつの中へと新たにアレイスとノアの二人が入ったきたことを受けてレゾンが自分が出るべきか否かを僕へと尋ねてくる。
「何を言っているんだ。レゾン。むしろ、お前はもっと足を伸ばせ。僕たち三人の足をそのもふもふ癒すんだ」
「承知いたしました。お二方。私のことはお布団だと思ってお好きに体を預けてください」
「あら?そう、ありがとう……本当に柔らかいわな」
「や、柔らかい」
「そう言ってくださると幸いにございます」
レゾンの足の魅力には二人も抗えないだろう。
「二人とも。他国から取り寄せた果物であるみかんがあるんだ。中々に珍しい一品だよ?好きに食べな」
僕はこたつの上に置いてあるみかんを二人へと渡す。
「あら、始めて見る果物ね。ちょっともらおうかしら。これは皮を剥けばいいのね?」
「貴族の食べる食事!」
「そう、皮をむくんだよ」
二人はもうこうして何のために僕の元へとやってきたかを忘れてしまっている。
「ふふふ……」
これこそがこたつの魔力。
冬場におけるこたつこそが最強なのだ。
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