第二章

こたつ

 王都に出向いて婚約者候補だというアレイスとの顔合わせ。

 ついでに面白いノアと便利なセレータと出会いを得た僕は結局、まともに婚約話をどうするかを決定することもなくカエサル家の領地の方に戻ってきていた。


「はぁー、温いわぁ」


 時は既に冬。

 ご丁寧に前世同様の四季があるこの世界の冬で僕は一人、ぬくぬくと過ごしていた。


「やはりこたつこそが正義」


 ぬくぬくと冬を過ごす僕は今、自作したこたつの中に入っている。

 文明レベルがオワコン、というよりも魔法技術の発達によって科学の発展が進まないこの世界ではこたつなんていう前世の文明の機器はない。

 なので、わざわざ僕が作る必要があったのだが……最終的にこれを作った僕は英断だったな。

 魔法で中の機構を再現するのは大変だったが。


「じゆぅー」


 今の僕には勉強も仕事もない。

 すべてを周りに任せておけば解決する……なんと気持ちの良いことだろうか。昼に起きて、夕方までお昼寝して、夜にぐっすり熟睡することができる。

 ダラダラ寝放題だ。


「レゾン。喉乾いた」


 ということでこたつでぬくぬく、魔導書を読んで過ごしていた僕は自分の口を開けながら器用に言葉を告げる。


「了解にございます、ルガン様」


 僕と同じこたつの中に入って、こちらをジッと見つめていたレゾンはこちらの言葉に頷き、ストローが差し込まれたジュース入りのグラスを手に取って近づけてくれる。


「んっ」


 僕は口元にまで運び込まれたストローを加えてグラスの中に入っているジュースで喉を潤していく。


「……美味しい」


「それなら良かったでございます……んっ」


 ちなみにだが、同じこたつの中に入っているレゾンの身体は太陽の匂いのする獣の毛でもふもふである。

 彼女が足を入れてくれることによって僕の足元を包んでくれる布団が勝手に完成する……彼女はもふもふで冬には重宝する人材である。夜寝るときも抱き枕として欠かせない。


「……」


 僕はこたつの中でぬくぬく。

 魔導書を読み、足でレゾンのもふもふを堪能する僕はダラダラと一日を過ごす……これこそが、生まれながらに何もかもを手にしている貴族の贅沢。

 前世の僕が追い求めていた仕事をせずにダラダラすることが合法的に認められている素晴らしき生活。

 そんな生活を僕はこれ以上ないまでに堪能していく……。



「さぁ!外に出るわよ!!!」



 そんな生活を堪能していた中……ッ。


「……はぁ?」


 急に王都の方にいるはずのアレイスとノアの二人組が僕の元へと襲撃を仕掛けてきたのだった。

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