ルール

「ちょっ!?どういうことなの!」


 流れるようにアレイスを気絶させてノアをぶん投げた僕に対して、投げられた張本人である彼が動揺の声を上げる。


「いやいや、殺せってことや」


 僕は魔法でもってその場に椅子を作り出し、そこへと腰掛けながら声を上げる。


「は、はぁ!?」


「……おいおい!餓鬼が、何をほざいていやがる?」


 僕の言葉に対してノアが驚愕の声を上げ、三人組の一人が僕の方に突っかかってくる。


「いきなり殺せ、だなんて随分と物騒なことを言ってくれるじゃないか!」


「僕が許可している。殺してもいいさ……ほれ、さっさとやるんだよ」


 だが、僕はそんな言葉に雑な答えを返す。


「……ッ!こちらは殺される謂れなんてないぞ!しっかりと!法に則って金を回収しているだけだ!借金をしているこいつらゴミどもが悪いんだ!わかるか?餓鬼ッ!」


「不敬罪だよ。ここで転がっている女は王女で、僕は侯爵家の倅だ……そんな僕を餓鬼呼ばわり。不敬罪で即刻処分が妥当だとは思わないかね?」


「……は、はぁ?」


 僕の言葉を聞いた三人組の表情が引き攣る。


「あぁ、逃げるなよ?逃げた瞬間、僕が殺す」


 そんな彼らへと僕は優しく声をかける。


「お前らがそこにいる餓鬼を倒せたら許してやる、無罪放免で帰してやるよ……あぁ、当然。人数差に年齢差もあるのだ。お前らは殺すの禁止な?」


 そして、そのまま三人組に対して淡々と縛りを設けていく。


「ちょうど武器も持っていないし、ちょうどいいだろう。拳だけでボコしてやれ。それで、ノアは全力でやれ。剣に振り回されるなよ?まぁ、お前は振り回されても死なないがな!勝てないのならば無様に地面を転がって胃の中をぶちまけてくれ。精々、俺を楽しませてくれよ」

 

「……悪趣味な奴だ!闘技場感覚かよ!」

 

 僕の言葉をすべて聞き終えたノアが怒りの声を上げる。


「……よし、やるか。坊主。俺たちも死にたくないのでな。死なない程度にボコしてやる。あまり、悪くは思うなよ?お前ら、出来るだけ残虐に行くぞ。それがお殿様のご所望らしいからな」


「来いよ!俺はお前ら三人もろともぶち殺してやる!今までの怒りを思い知れ!」


 完全に一触即発。

 拳を構える三人組に対して、ノアは力強く宣言すると剣を構え始める。


「あ、あわわ」


 気絶しているアレイスに戦いを始める気満々なノアと三人組。

 そして、観戦者を気取っている僕の四人を交互に見比べてわなわなと震えている老シスターのことを無視しながら。


「それじゃあ、始めろ」


 僕はさっさと戦うように促すのだった。

 

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