襲撃

「おい、ノア。そこに置くのはルール違反だ。覚えろ」


「うるさい。そもそも初めてやるんだぞ、俺は。少しくらい手加減しろ」


「たわけ、餓鬼」


 僕は己の目の前に座っているノアとやいのやいの言いながらボードゲームをして遊んでいた。


「……あの、それでうちの孤児院には何の用なのでしょうか?」


「いや、そちらの子が暴漢されていることを発見したのよ。それで私たちが助けたよって、言う話で……あまり、用とかはなかったり。ルガンの方がノアに金と力を与えるとかも言っていたけど」


 ちなみに、そんな僕たちの隣で老シスターとアレイスが真面目そうな表情で話しあいをしている。


「そ、それはどういう……」


「……さ、さぁ?」


「「……」」


 違った。

 別にボードゲームをしている僕たちの隣に座っている老シスターとアレイスは互いに向き合って座っているだけだった。


「はい、僕の勝ち」


 きまづい雰囲気の流れる隣の二人を横目にボードゲームを進めていた僕は一つの駒を動かし、勝利宣言を発する。


「……え?なっているでしょ。まだ俺は負けていない」


「なっているだろうが、よく見ろ。ここ」


「……あっ」


「迂闊。ちゃんと見とけ?そんな視野狭いと冒険者になって一発成功するなんて無理だぞ?」


「ぐ、ぐぬぬ。もう一回だ!もう一回!次は勝つ!」


「おー、やるか」


 僕がノアの言葉に返答する。


「……おん?」


 急に孤児院の玄関口の方が開かれたのは。


「誰か来たな。見に行くか」


「えっ!?」


 応接室にいた僕は何気ない動きで立ち上がり、表の礼拝堂の方へと向かっていく。


「しょ、少々お待ちを!」


「あっ、待ってよ!」


「俺のリベンジ!」


 そんな僕の後をその他の三人も追いかけてくる。


「誰や、アンタら」


 いの一番に礼拝堂の方へとやってきた僕は玄関口に立っていた三人の男組、厳つい相貌の彼らを前に疑問の声を上げる。


「……あ?いや、お前こそ誰で……って、別に新しい餓鬼のことはまぁ、良い。それでシスターさんよぉ。金は容易出来たのか?えぇ?」


「……っ!そ、それは!少々お待ちを!」


 厳つい三人組のうち一人が上げるどすの利いた声に老シスターの焦ったような声。


「なるほど」


「……ッ」


 僕とアレイスは共に状況を理解する。


「あな」


「せいやっ!」


 そして、アレイスは厳つい三人組へと声をかけるために歩き始め───僕はそんな彼女の腹に膝蹴りを叩き込んだ。


「……ぁ」


 僕の華麗なる一撃は完璧にアレイスの意識を吹き飛ばして見せる。


「よし、行ってこい!」


「……へ?あぁぁぁぁぁあああああああああ!?」


 そして、流れるように僕は自分の隣に立っていたノアを彼ら、厳つい三人組の方に投げ捨てるのであった。

  

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