剣
「ようこそ、お越しくださいました……第二王女殿下並びにカエサル卿」
僕とアレイスがやってきたスラム街に建てられたボロボロの孤児院。
そこのシスターをやっていた老婆が体を震わせながら僕たち二人へと頭を下げながら挨拶の言葉を一つ。
「えぇ、歓待ありがとう。別に私たちはまだ子供。熱烈な歓待は求めていないわ。楽にしていて頂戴」
「え、えぇ……ありがとうございます」
アレイスの言葉に老シスターは震えながら頷く。
「入るぞー」
そんな老シスターの横を通り抜けて僕はノアと共にボロボロの孤児院の中に入っていく。
「……あっ」
この世界の孤児院は基本的に宗教関連の組織が運用しており、ここも教会のような作りをしている。
「ここでええやろ」
ノアと共に孤児院の中に入ると共に突き当たる礼拝堂に立ち止まった僕はそのまま奥にまで突き進み、割れてしまっているステンドグラスから日光が差し込んでいる場所へと立つ。
「ほれ、ひれ伏せ。お前に力を授けてやる」
「……胡散臭いですね」
僕の言葉に対してノアが眉を潜めながらたった一言を吐き捨てる。
「お前に拒否権なんてないよ」
「……むぅ」
ノアは不平不満と言わんばかりの表情でありながらも、僕の前に来て祈りを捧げるようなポーズを取る。
「何をしようとしているの?」
「ん?この餓鬼に戦えるだけの力を与えるって約束したものでな。ちゃんと約束を守るためにな……すぅ」
僕はアレイスの言葉に答えると共に息を吸い、自分の中にある魔力を開放する。
「永久へと至る階段、余へと捧げし祈り、天宝を抱く龍の子、万世錬成───神器十束ノ剣」
カエサル家に伝わっている家系魔法。
強力な武器を作る魔法……それを用いて、僕は一振りの長剣を作り出す。
「我に傅く人の子よ、剣を与えん」
無駄に神々しい光と共に生み出された剣はノアの前に舞い降りる。
「ほい、金。剣と金さえあれば何とかなるだろ。その十束ノ剣はぶっちゃけただの剣だが、お前のような餓鬼が使うにはだいぶ過分な剣だ。ありがたく使えよ?」
「あ、ありがとうございます」
僕の言葉を受け、ノアはちゃんと恭しく剣を握りしめて持ち上げる。
それと共に鞘が姿を現し、彼女が剣を背負るようにベルトも彼女に巻き付けていく。
「うし、老シスター。もてなせ。そこらにいる餓鬼どもも見たい……僕は戦力を欲しているのでな。あぁ、当然だが断るなよ?我ら貴族に断るということはどう」
「何を言っているのっ!おバカ!」
「いった!?何するねん!?」
いきなりアレイスから殴られた僕は不満の声を上げるのだった。
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