カツアゲ
「な、何だこいつ!?」
いきなり彼らが使用していた魔法を打ち破って攻撃を加えた僕を前に彼らは驚愕の表情を浮かべる。
「こんなちんけな魔法が完璧であるわけがないだろう?……さてはて、諸君は一体何をしていたのかな?」
僕の前にいる男たち。
それは裏路地に住まう荒くれ者たちであり、そんな彼らの足元には泣き崩れている一人の少年が転がっている。
地面に転がっている少年の体はボロボロに傷つけられている。
それでも、その少年はまだ意識を失っていない様子だった……この状態になっても荒くれ者への敵意と新顔である僕たちへの警戒心を抱いていることから、かなり肝が据わっていることがうかがえる。
後で、ちょっかいかけるのもいいかもね。
「……っ!が、餓鬼が!?いい気になっているんじゃねぇぞ!」
荒くれ者たちは色々と疑問の湧き出てきている頃合いであろう。
されど、それらをすべて押し殺し、荒くれ者としてのちっぽけなプライドを胸に僕へと歯向かってくる。
「よっと」
「ぐ、おっ」
そんな反骨精神と共に繰り出された荒くれ者のパンチをさらりと回避した僕はその腹に肘で手痛い一撃を叩き込んで気絶にまで追い込んで見せる。
「ふんふんふーん」
そして、僕は半ば癖で気絶した男の体を焦って財布を抜き取る。
「ちっ、しけてやがるな、いや……それもそうか」
普通に考えてこんなところでくすぶっている荒くれ者風情が貴族である僕を満たせるだけの金を持っているはずがない……それでもうっかり手を伸ばしてしまうのは癖だろう。
いい加減、前世でやんちゃしていた頃の癖は抜かないとな
「ちょいちょい!何をしているのよ」
手慣れた手付きで物を漁っていた僕の頭をアレイスは何の遠慮もなく叩くと、彼女は僕を押しのけて残っている荒くれてものたちの前に立つ。
「私はこの国の第二王女!アレイスよ!少年への暴行の容疑で今から貴方たちを逮捕するわ!」
「なっ!?お、王女だと!?」
「……ッ!」
「ひぃ!」
アレイスの言葉を聞いた荒くれ者たちの反応は多岐にわたった。
ただただ驚くもの、一目散に逃げだすもの、怯えるもの。
「逃がさいわよーっ!」
そんな反応を見せる荒くれ者に対してアレイスは一切引くことはない。
彼女は年齢に見合わない魔法の腕でもって全員を一網打尽でお縄につけていく。
「ふふふ」
そんなアレイスを他所に、僕は地面へと無様に転がっている少年の方に近づいていく。
「さて、お兄さんと面白い話をしようか」
そして、笑顔で僕は話しかけるのだった。
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